第34回(1955年下半期)芥川龍之介賞を受賞
高校生の津川竜哉はボクシングに熱中する一方、仲間達と喧嘩や麻雀、女遊びを繰り返していた。ある日、竜哉は街でナンパした英子と関係を結んだ。最初竜哉の方が英子に夢中になり、英子が見知らぬ男といれば嫉妬した。が英子が竜哉を愛し得るようになると英子は変わった。だが竜哉は未だ女には初な少年だった。次第に英子に付き纏われることに嫌気がさし、残忍な態度を示すようになった。極め付けは、竜哉が兄道久に英子を5千円で売りつけたことだった。英子は怒って道久に金を叩きつけるが、竜哉はそれを繰り返して道久から金を何度も巻き上げた。そのうち英子は竜哉の子を身籠る。ギリギリまで態度をハッキリさせなかった竜哉は引っ張り続け、ようやく子供を始末する決心をして赤ん坊は殺された(中絶された)。英子は入院し帝王切開術を受けたが4日後に腹膜炎を併発して死亡した。葬式で掲げられた英子の遺影は、笑顔の下、挑むような眼差しをしていた。竜哉は英子から一番残酷な復讐をされたと感じて、香炉を遺影に投げつけ額を壊す。竜哉は学校のジムでパンチングバッグを打ちながら、ふと英子の言った言葉を思い出した。―何故貴方は、もっと素直に愛することが出来ないの―竜哉の幻覚は英子の笑顔を見た。それを彼は夢中で殴りつけた。
1955年文芸雑誌『文學界』7月号に掲載され、第1回文學界新人賞を受賞。太陽族という言葉はここから生まれた。