ロスジェネの逆襲 池井戸潤

半沢直樹の名セリフ「サラリーマンはーいや、サラリーマンだけじゃなくて全ての働く人は、自分を必要とされる場所にいて、そこで活躍するのが一番幸せなんだ。会社の大小なんて関係ない。知名度も。オレたちが追求すべきは、看板じゃなく、中味だ」(231頁)。
古巣の東京中央銀行の副頭取が進めていた陰謀ともいえるスキームのとんでもないところを見事に論破して正論を吐く半沢直樹が後輩に語る言葉だが、やはりカッコイイ。
「オレたちバブル世代は既存の仕組みに乗っかる形で社会に出た。好景気だったが故に、世の中に対する疑問や不信感というものがまるでなかった。つまり、上の世代が作り上げた仕組みになんの抵抗も感じず、素直に取り込まれたわけだ。そして間違っていたと気づいたときには、もうどうすることもできない状況に置かれ、追い詰められていた」「だか、お前たちは違う。お前たちには、社会に対する疑問や反感という、我々の世代にはないフィルターがあり根深い問題意識があるはずだ。世の中をば変えていけるとすれば、お前たちの世代なんだよ。失われた十年に世の中に出た者だけが、あるいは、さらにその下の世代が、これからの十年で世の中を変える資格が得られるのかも知れない。ロスジェネの逆襲がこれから始まるとオレは期待している。他が、世の中には受け入れられるためには批判だけじゃだめだ。誰もが納得する答えが要る」…「簡単なことさ。正しいことを正しいといえること。世の中の常識と組織の常識とを一致させること。ただ、それだけのことだ。ひたむきで誠実に働いた者がきちんと評価される。そんな当たり前のことさえ、いまの組織はできていない。だからダメなんだ」原因は何だとお考えですか。「自分のために仕事をばしているからだ」「仕事は客のためにするもんだ。ひいては世の中のためにする。その原則を忘れたとき、人は自分のためにだけに仕事をするようになる。自分のためにした仕事は内向きで、卑屈で、身勝手な都合で醜く歪んでいく。そういう連中が増えれば、当然組織も腐っていく。組織があるはずだ腐れば世の中も腐る」「これはオレのためにした仮説であって、きっとお前はもっと的確な答えを見つけるはずだ。いつの日か、それをオレに話してくれるのを楽しみにしている」
泣ける。