ことわざの論理 外山滋比古

灯台もと暗し
 近くを愛する自己中心主義と遠くへ目を向ける好奇心の二つがほどよく調和したとき、近い所から遠い所までがほぼ一様に視野に入ることになる。ところが、どうも一方的自己中心主義による失敗が多い。それで”灯台もと暗し”ということわざが必要になるのである。

 近代人は単細胞になって、ことわざも一面的にしか考えられなくなった。それでりっぱなことわざをつまらなくしてしまったのである。
 ひとつのことわざが一方のことを言っていれば、たいて、その反対のことをとらえたことわざがあるものである。