世界2019年8月 核軍縮への課題ー核兵器禁止条約成立から2年、いま何をなすべきか 川上哲

川上哲 ICAN国際運営委員

発効へ向かう核兵器禁止条約
 この条約は50か国が批准した90日後に発行する。6月19日現在23か国が批准を済ませているので約半分まで来たという現状を紹介するところから始まっている(賛成票は122か国、70か国が署名)。
 122か国が賛成したのに署名が未だ70か国であることの背景に核兵器国からの圧力があるという指摘も。現に南アフリカの政府代表がその旨明言。しかし「今や核なき世界への『大衆運動』が始まったのであり『このプロセスは止めることはできない」と述べた。

核依存国での議論
 同条約がkんししているのは、核を持たない国が他国による核兵器の使用などを「援助、奨励」することであるため、これをしないと確約する限りは理論上核兵器国と同盟関係にある国々が禁止条約に加入することは可能であると述べた上で、日本が、米国が加入していない対人地雷禁止条約に加入している事実を指摘して、同様の線引きをすれば禁止条約に加入することは可能となるはずだと展開する。
 ★この部分は説得的だと思う。

 その上でNATOに加入するオランダや非加盟のスウェーデン・スイスなどの例を引きながら、禁止条約への加入について検討をしていることが注目される。
 米国と同盟関係にあるオーストラリアの野党に対するICANの取り組みも実に示唆に富んでいる。

米国、軍縮への「環境作り」
米ロ核軍拡競争の現実味
中東と北東アジア
国際法ルールの危機
ICANの戦略

という項目の論考が続き、

最後に
日本をどうするー3つの層と3つの課題
という項目でまとめられている。
政治的立ち位置については
第1に、核兵器廃絶と禁止条約をすでに明確に支持している層。
第2に、現政権と異なる代替的な安保政策を追求しようとする層。
第3に、政権与党を信頼しているが、核軍縮はもっと取り組むべきだと考えている層。
に分けて、最後の層について「自民党内にも少数ながらそういう声はあるし、公明党は支持母体の創価学会ICANのパートナーとして核兵器廃絶を唱道している」と述べる。その上でこの層の課題についても言及している。

★核軍縮に向けて今何をなすべきかを考える重要な論考だと思った次第である。