ダンテ 新曲物語 野上素一訳著

1968年2月28日初版第1刷発行 1984年7月30日初版第35刷発行

 

全くもって難解です。内容を理解したとは到底言い難いです。

地獄篇は薄ら気味の悪い描写が続きます。ヴィルジリオとダンテとのやり取りをはじめ、おどろおどろしい描写だとは思いますが、意味を理解するのはとても難しいです。浄罪篇では少しだけ希望が湧くような感じがします。天堂篇ではキリスト教の信者だと少しは意味は理解できるのかもしれませんが、門外漢だとやはりちんぷんかんぷんです。それでも、天堂篇に入ってベアトリーチェがダンテに掛ける言葉が何となくですが、少しだけ理解できるような気もします。

巻末の解説によると、各篇は33歌で構成され、序章が1歌つくので全体で百歌。行数は14233行、詩型は3行1組になっていて(ネット情報だと、脚韻を踏み続けているらしいです)、神秘的数字が3だからという理由のようです(そしてネットによると、三位一体を作品全体で表そうとしていたらしいです)。

 

浄罪篇 「人間の栄光なんてはなかいものです」

    「現世の評判なぞ、今日はこちらへ、明日はあちらへ吹く風のようなものです」

    「人間には善悪判断の理性の光が与えられています。自由意志は本能とたたかいながら初めは苦闘するかもしれないが、鍛えられればやがてすべての障害にうち勝つはずです。諸君はもっと大きな力ともっと大きな性に属し、それらの力や性は諸君の中に、本能の左右しえない理性的な魂を創りだします。それゆえ、もし今日の世界が道を誤っているなら、その原因は諸君にあり、諸君の中に捜さねばなりません」

天堂篇 「彼らがおのおの異なった階(さぎはし)に座らせているのは、自分のなした行為の徳によるのでなく、その神を見る視力の差によるものなのである」

    「クリストにもっとも似た顔をもつという聖母マリアの顔を、とくと眺めるがよい。その輝きのみが、汝にクリストを見ることを可能にするのだから」