陳建民 四川料理を日本に広めた男 筑摩書房編集部

2015年9月20日 初版第1刷発行

 

きょうの料理」で人気があった陳建民。独特な日本語(?)を駆使してお茶の間の人気者だった。麻婆豆腐は本来の味のままだと日本人には痺れる辛さのためか、黒色でなく色も綺麗な赤色にして味も日本好みに変えてアレンジ。エビチリも日本人の好きな味にするためにケチップをふんだんに使った陳建民のオリジナル。息子さんの陳健一さんは料理の鉄人でおなじみ。そのお父さんだったんですね。「料理は愛情」「愛情ない、おいしくない」は名言です。ちなみに麻婆豆腐は、もともとアバタを意味する「麻」に、おかみさんを意味する「婆」の命名だそうです。へ―、って感じです。赤坂の四川飯店は結構利用しました。お弁当も絶品でした。あー、こんな話をしているだけで食べたくなります!ちなみに料理学校を設立したほか、薬膳料理を目指そうとしていた矢先に71歳で亡くなったそうです。冥福をお祈りします。

巻末の「『少しの嘘』が、みんなを幸せにした理由」(平松洋子)は、なかなか良い解説でした。嘘とニセモノは区別する。嘘は四川そのものの味ではなくて日本人向けにアレンジした味なので嘘だけれども、決してニセモノではない、その背景にあるのは相手の文化を尊重し接点を見出そうとして共存を目指しているかどうか、そこに嘘とニセモノの違いあるという趣旨のことが書いてありました(かなり意訳しましたが)。なるほど!と思わず膝を打ちました。最後に陳建民さんは料理の天才だったと思います。食材を見ているとどういう味付けをするのが一番いいのか思い浮かんでしまったというのですから。料理好きの私もそんな境地になりたいと思いました(笑)。