ケーキの切れない非行少年たち 宮口幸治

2019年7月20日発行 2020年10月5日28刷

 

今までずっと無視していましたが、60万部突破!の帯封を見て、遂に買ってしまいました。

そもそも反省する前に、その前段階の認知機能そのものに問題があって、その支援をすることなしに反省させようとしても土台無理な話。簡単な図を見せて再現させようと思っても再現できない。三等分するという意味がそもそも理解できていない。それが表題の意味だったようです。医療少年院での勤務を生かして、いわゆる発達障害とは別に知的障害に関する問題もきちんとフォローし支援しなければ非行少年を立ち直させることができないという、言われてみれば当たり前のことが書いてあるのですが、それを経験から語っているので説得力がありました。

「子どもの心に扉があるとすれば、その取手は内側にしかついてない」という矯正教育に長年携わってこれらた方の言葉が最も印象的でした。その取手をどう少年が自分で開けられるようにして周囲が支援してあげられるか。それができないから本来被害者なのに加害者になってしまう悪循環が生まれているとも。

福島章さんは精神鑑定で行った殺人犯48例の脳MRIや脳CT検査などの画像検査の結果をまとめ、半数の24名に脳の質的異常が量的異常などの異常所見を確認したとのこと。更に被害者の2人以上の大量殺人に限っては62%に異常所見を認めたとも。

脳機能の障害に対応した何らかの認知機能へのトレーニングは必要なことは間違いないのではないかと問題提起する筆者の意見には賛成です。

この本がこれほどまでに売れているのには正直驚きました。発達障害や知的障害に対する支援の輪が大きく広がるチャンスの時を迎えているのかもしれません。

コグトレに関心のある方はホームページがあったので参照ください。