オリエント急行殺人事件 作クリスティ 訳神鳥統夫

2005年11月第1刷 2015年第5刷

 

アガサクリスティー推理小説を久しぶりに読む。豪華客車の中で起きた、密室殺人。たまたま名探偵ポワロが乗り合わせ、12名の乗客から聞き取りをすることから事件の真相をあぶりだす。その真相とは?被害者が何者で、乗客と被害者とはどういう関係なのか。乗客の話を突合すると、話が矛盾してしまう。これは一体どういう訳か?もしかすると〇〇ではないのか?と読者に思わせ、案の定、見事にポアロが推察するとおりの事件の真相が浮かび上がる。その一方で、もう一つの結論も心憎いほどに用意されており、犯人は無罪放免となる。これが良いとか悪いとかという問題ではない。現実離れしているけど、現実に起きても全然おかしくない、この微妙さを描くクリスティーはやはり天才だ。現実にはそんなことありへんやんと思わせたら推理小説としては失敗だろうし、現実に起きるかもと思いつつ現実離れしていないと、面白みに欠ける。そのバランスの取り方がクリスティーは絶妙です。