常識として知っておきたい日本語ノート 齋藤孝

2021年9月15日第1刷発行

 

表紙「ネット・SNS・字幕にあふれる言葉の間違い、わかりますか?「私には役不足でした」「彼は気の置ける仲間です」「すべからくごもっともです」・・・正しくは?読むだけで『正しい使い方』と教養が身につく!」

表紙裏「『的を得る』『どちらにいたしますか?』『圧観のできばえ』『怒り心頭に達する』…いい大学出ていても、こういう間違いをすると…教養を疑われる『誤用』を厳選して解説。知性と信用・評価が高まる保存版」

 

1 「混同」の間違い

× お客様のご指摘は、すべからくもっともだと思います。

  → 〇 お客様のご指摘は、すべてもっともだと思います。

 ・すべからく、は、・・・べし。

× くしの歯が抜けたようだ。  → 〇 くしの歯が欠けたようだ。

× 喝采を叫んだ。 → 〇 快哉を叫んだ。

 ・喝采を送る。喝采を博する。

× いやが応でも盛り上がった。 → 〇 いやが上でも盛り上がった。

 ・いやが応でも、は、有無を言わせずに、の意味。

× いつまで会長の地位に連綿とするのだろうか。 

→ 〇 いつまで会長の地位に恋々とするのだろうか。

× ゲーム熱にうなされている。 → 〇 ゲーム熱に浮かされている。

 ・悪夢にうなされている。

× 胸先三寸に納める → 〇 胸三寸に納める

 ・胸先三寸に凶器を突きつける

× 上司の胸三寸で決まる → 〇 上司の胸一つで決まる

× 口先三寸で丸め込もうとする → 〇 舌先三寸で丸め込もうとする

 ・口先三寸という言葉はない

× 負けずとも劣らない → 〇 勝るとも劣らない

 ・負けず劣らず、という言い方はある

× 絶えまず努力 → 〇 弛まず努力した

 ・絶え間なく努力、という言い方はある

× 愛想を振りまく → 〇 愛嬌を振りまく

 ・愛想がいい、という言い方はある

× 恨み骨髄に発した → 〇 恨み骨髄に徹した

× 怒り心頭に達した → 〇 怒り心頭に発した ●間違えて覚えてました●

× 去年の雪辱を晴らした → 〇 去年の雪辱を果たした ●間違えて覚えてました●

× 例外にもれず、ハズレました → 〇 例にもれず、ハズレました

 

2 「意味・使い方」の間違い

× 被害者面するとは慙愧に堪えない → 〇 被害者面するとは厚顔無恥である

 ・自分のミスでチームに迷惑をかけてしまい、慙愧に堪えない、という言い方はある

× このまま手ぐすね引いていたら、赤字が膨らむだけですよ

→ 〇 このまま手をこまねいていたら、赤字が膨らむだけですよ

 ・警察は、犯人が現れるのを手ぐすね引いて待っている、という使い方をする

× 食指をそそる → 〇 食指が動く

 ・食欲をそそるとの混同

× このスキルがあれば、稼げるのは火を見るより明らかだ

 → 状況が悪化することが確実である、という意味でつかわれるので、ポジティブな文脈では使わない

× 会議で異存は出ませんでした → 〇 会議で異議は出ませんでした

 ・異存はなかった、という言い方はある

× 新人をいさめる → 〇 新人をたしなめる

 ・部長の計画があまりに無謀なので、さすがにいさめました、という使い方をする

× 合格発表日には、毎年悲喜こもごものドラマが生まれる

 → 一人の人の信教について使う言葉であり、複数の人たちの感情を表す言葉ではない。

 ・悲喜こもごもの高校3年間だった、という使い方をする

× あわや東大に現役合格という秀才だった

 → 〇 あと一息で東大に現役合格という秀才だった

 ・あわやトラックと正面衝突するところ

× 3月、梅の咲く小春日和のなか、散歩を楽しんだ

 → 「小春」は旧暦10月のこと。春の言葉ではない

× 元旦の夜 → 元日の夜

 ・元旦は「元日の朝」の意味

× 県内でも指折りの、交通事故が多い交差点

 → 優れている時に使う言葉であり、よくないことには使わない。

 ・彼は世界でも指折りのサッカー選手です

× 暫時進行 → 〇 漸次進行

 ・暫時(ざんじ)休息という使い方をする

×プロ野球選手は草野球選手の敵ではない

 → 逆(〇 草野球選手はプロ野球選手の敵ではない)

×恩の字 → 〇 御の字

×帯同させてほしいと上司に頼んだ → 〇 同行させてほしいと上司に頼んだ

 ・秘書を帯同して出張に出た、という使い方をする

×垣間見せる → 〇 垣間見る

×相手はハーバード大卒らしいけど、名前負けせず頑張れ 

 → 〇 名前に圧倒されず頑張れ 

 ・名前負けは名前が立派すぎて実物が見劣りすること。

×バランスが逆転した → 〇 バランスが崩れたor勢力が逆転した

×祖母は90歳。晩年になっても元気で過しています

 → 生存している人に「晩年」は使わない

 ・亡くなった父は、晩年も毎日散歩を欠かしませんでした

×射程距離 → 〇 射程内

×まんじりともせず聞いていた → 〇 微動だにせず聞いていた

 ・まんじりともせず夜を明かした

 

3 「敬語」の間違い

×吉沢次長様 → 〇 吉沢次長r吉沢様

×御社の製品を存じ上げています → 〇御社の製品を存じています

×おっしゃられたこと → 〇 おっしゃったこと

×伺ってございます → 〇 伺っております

×半額でご購入できます → 〇 半額でご購入になれます

×ご静聴いただき → 〇 ご清聴いただき ●意識していなかった●

 

4 「漢字」の間違い ①同音異字

×頭に乗る → 〇 図に乗る

×短刀直入 → 〇 単刀直入

×絶対絶命 → 〇 絶体絶命

×興味深々 → 〇 興味津々

×権力を欲しいままに → 〇 権力を恣に

×癪に触る → 〇 癪に障るor癇に触れるor癇に障る

×原価償却 → 〇 減価償却

×好遇 → 〇 厚遇

 

5 「漢字」の間違い ②読み

版図 ×はんず 〇はんと

黄綬褒章 ×きじゅほうしょう 〇おうじゅほうしょう

杮落し ×かきおとし 〇こけらおとし ●柿と杮は漢字が違う●

間髪 ×かんぱつ 〇かんはつ

曳航 ×ようこう 〇えいこう

玄孫 ×げんそん 〇やしゃご

柵 ×しきたり 〇しがらみ

 

6 「漢字」の間違い ③変化してきた読み方

公孫樹 いちょう

庭訓 ていきん

 

7 変化してきた言葉

×歴史の謎をひもといていきます 〇歴史の謎を解明していきます

・ひもとくは本を読むことを表す言葉

×さおさすに時代に逆行する、という意味はない。舟を進めることが原意

 

8 「ことわざ・故事成語」の間違い

×一姫二太郎の3人きょうだい 〇一姫二太郎の2人きょうだい

×三日とあけず 〇三日にあけず

×多少の縁 〇多生(他生)の縁

 

勉強になるなあ。誤解していたことが結構ありました。