複合汚染 有吉佐和子

昭和54年5月25日発行 平成14年5月5日49刷改版 平成19年4月20日54刷

 

裏表紙に「工場廃液や合成洗剤で河川は汚濁し、化学肥料と除草剤で土壌は死に、有害物質は食物を通じて人体に蓄積され、生まれてくる子供たちまで蝕まれていく……。毒性物質の複合がもたらす汚染の実態は、現代科学をもってしても解明できない。おそるべき環境汚染を食い止めることは出来るのか? 小説家の直感と広汎な調査により、自然と生命の危機を訴え、世間を震撼させた衝撃の問題作!」とある。本当に“衝撃”の内容だ!

300冊の環境に関する書籍を読み込み、素人と言いつつ、市民感覚で環境問題に取り組み、朝日新聞に連載小説を執筆した著者は、ストーリーテラーとしてではなく、“今あるそこにある危機”を一般読者に分かり易く伝えることに徹した。

この本を一読して感じたことは、果たして、一体どこに、化学肥料で作られることなく、除草剤、殺虫剤、防腐剤が染み込んでいない、豊かな土壌で有機栽培された「野菜」はあるのだろう? 農薬がたっぷりと含まれている飼料を食べていない、自然の飼料が与えられている、牧草など土壌がしっかりしたところで育てられた「家畜」(牛、豚、鶏)はどこにいるのだろう? 合成洗剤が垂れ流しにされた河川が流れ込んだ海で育ったのではない、健康な「魚」はどこにいるのだろう?ということだ。

それらを手に入れるには、一体、どこで何を買ったらいいんだろう?もはやそんなものを手に入れるのは無理なのか?

小見出しがついていない作品なので、読み返した時にどこに何が書いてあるのかすぐには思い出せない位、沢山の情報が一杯詰まっている。その豊富な内容は出来れば全部頭に叩きこんでおきたいが、余りの情報量に圧倒されて覚えきれないのが正直なところ。でも、この小説が発表されて相当年月が経過した昨今、果たして日本の環境問題は改善されたのだろうか? 昔と今とで対比したいと思うが、きっと誰かがこの分野の研究をし続けているんだろうから、その人たちの研究成果を是非勉強したいと思う。結局、自分で小さな農園でも持つしかないのかな? どうやらキーワードは「ミミズ」。ミミズがたくさんいる土壌の中で野菜を育て、家畜を飼い、その近くの綺麗な河で魚釣りをする。そんな生活に憧れてしまう。そういえば、妻の田舎にはタケノコが沢山生える山があると言っていた。そんな田舎で余生を暮らすのもいいかもしれない。。。