リボルバー 原田マハ

2021年5月25日第1刷発行

 

ゴッホが自殺する時に使ったリボルバーと称してオークション会社に持ち込んだサラ。その調査に当たった冴。冴はゴッホゴーギャンを中心にフランスの大学で研究してきた経歴を持つ。一般的にはゴッホゴーギャンが一時期共同生活を営み、その最後にゴッホが自らの耳を切り落とす事件を起こし、ゴッホが最後は拳銃自殺をしたこと、しかもゴッホゴーギャンも生前は評価されることなく、死後になって新しい絵画の世界を作り出したとして賞賛され、特にゴッホの作品はオークションで驚くべき高値をつけるようになったことは通常の読者の共通知識として持っている。それを前提に、果たしてゴッホは本当に自殺したのか、ゴーギャンゴッホの才能に嫉妬して殺害したのではないか、このリボルバーはその時に使われたものではないのか、そもそもサラという女性がどうしてこのリボルバーを手にしたのか?そんなこんなあれこれをサラが丹念に調査していく。手掛かりはサラが母から生前に聞いた話だった。その母も、祖母から聞いた話を伝えた。曾祖母は、・・・実はゴーギャンの愛人でゴーギャンの作品のモデルだった。なのでサラが伝え聞いた話には迫真性が伴う。

巻末には「この作品は史実に基づくフィクションです」「ゴッホが自殺に使ったとされるリボルバーは、2019年6月19日、パリの競売会社オークションアートによって競売にかけられ、16万ユーロ(約2000万円)で落札された」とあるので、どこまでが本当なのか?と読者に思わせつつ、最後まで読ませてしまう。それにしても、ゴッホゴーギャンも、新しい絵画創作のために命を燃やして最後は世に認められず死んでいく。そんな悲しい中にも真の芸術家とは何か?ということを考えさせてくれるミステリーだった。原田さんの作品はいつも絵画をテーマにしていてとても勉強になるし、面白い。これからも読み続けていきたいと思う。