対岸の彼女 角田光代

2004年11月10日第1刷発行 2005年6月10日第16刷発行

 

35歳の小夜子が3歳の娘を連れて公園デビューするが、小夜子自身が人見知りをしてママ友が出来ない。娘もいつも一人で遊んでいる。そんな小夜子が娘を保育園に預けて姑に嫌味を言われながら清掃業の会社でパート働きを始める。社長の葵は小夜子と同じ大学の出身で同じ年。小夜子の歓迎会の後、葵の自宅で二人飲み会をして距離が縮まっていく。

葵の高校時代の回想が間に入る。葵は中学時代にいじめにあったので高校ではおとなしいグループに入っていじめに遭うのを避けようとする。そんな中、どのグループにも入らず明るく振る舞うナナコと郊外で親しく付き合う。ナナコが周囲から貧乏の家に住んでいるという噂を立てられ、葵が一度ナナコの住む公営団地に行ったことがあったが、ナナコの深い闇に触れる。夏休みに二人で海の家でアルバイトをする。最終日ナナコは帰りたくないと言い出す。結局、二人はラブホ泊まりを繰り返し、家に帰らない生活を続ける。ディスコで男におごってもらい、それでも生活に金がかかって段々心細くなっていく。化粧して髪を染め同級生から金を巻き上げる。そんな時、ナナコは葵に飛び降り自殺(心中)を持ち掛ける。

小夜子は掃除と掃除のビラ配りに精を出す。が、社員は葵の経営計画がいい加減なことに口を出す。小夜子は何のことを言っているのか分からない。小夜子が社長と小旅行に出かける。その日泊まれない、帰らないといけないと小夜子がいうと、社長は不機嫌になり、男性社員を呼び出す。

葵がいつの間にか家に帰っている。家では母か祖母が葵を見張っている。ナナコがどこかに消えてしまった。葵は大学に進学する。タイに旅行に行った先でナナコの写真を見せてあげると言われてついていくと恐喝されてお金を巻き上げられる。

社長の下から清掃業を担当していた社員が辞職していなくなる。そのため旅行業の仕事を小夜子にやってくれと言われる。小夜子は葵の自殺未遂事件のことを知っていたのでその後どうなったのか聞く。葵は答える。葵はかつての自分を小夜子に見、自分がナナコのように振る舞っているように思う。葵は小夜子の質問に答えた後で仕事の返事をくれという。小夜子は清掃の仕事ができないなら辞めるかもしれないと答えて社を出ていく。

会社は皆辞めてしまったと元同僚から聞いた小夜子はある日葵の家に行く。そして再び葵の下で働きたい、何でもやると言い出す。まずは葵の部屋の片づけから始まる。そして二人でビールで乾杯する。

人と人との出会い、出会った人ともまたいつかは別れていく。人との出会いって何だろう?昔の友達って何だろう?昔仲良かった友達とも時の経過とともに会いづらくなるのって何なんだろう?そんなことをつらつら考えさせる現代小説でした。