「四権分立の可能性‐日本とコスタリカ共和国の制度の比較を通じて」石坂広樹 『四権分立の研究―教育権の独立-』大崎素史編著

2014年3月16日初版1刷発行

 

教育権を、三権分立から更に独立させて、四権分立にすべきではないか?

その観点から書かれた本論稿は、これまで深く考えたこともなかった、日本の教育制度なかんずく教育委員会の制度が果たして今のままでいいのかという疑問に真正面から取り組む、啓発的な内容となっている。

ただ、なぜ四権分立であるべきなのか、については、まだ議論が必ずしも成熟しているとは言えず、この部分はもっと突き詰めて議論を展開してほしいと思う。しかしそれを割り引いて考えても、現行の教育委員会の制度を、分かり易く説明してくれているので、為になった。

特に、国から作成努力が求められている地方版「教育振興基本計画」について、大阪では①作成を義務とする②知事・市長が教育委員会と協議して基本計画案を作成③協議が整わない時は委員会の意見を付して案を議会に提出する④知事・市長は委員会と共同で基本計画を毎年点検評価し報告書を議会へ提出し公表する、とあり、刺激を受けた。大阪の取り組みはそれなりに前進させようとするものだ。この辺りの事実に余り意識を払ってなかったせいか、報道されていたかどうか余り記憶にない。もっと大きく報じられてもよいと思う。その上で教育再生実行会議の第二次提言が詳しく取り上げられており、国や教育長の権限拡大の方向性が示されている(2014年時点のものなので現在どうなっているかは調べてみる必要がある)。それにしても法律家と教育界がコラボ的にこの問題は深めてほしいと思った。

後半ではコスタリカの教育制度が詳しく紹介されており、特に「教育最高評議会」が教育省の下部機関ではなく「憲法的性質」を有した法人組織として設立されていることが法において明記されており、これにより立法・行政・司法と対等な教育という分野が憲法上意義づけられたものと考えられる、また評議会は独自の予算を保持することが保障された、ともあり、四権分立制度を採用しているとまでは言えないまでも、それに至る課題・検討を取り上げ、そこから現状の日本で四権分立制度を取り入れるのにどういう方策があるかについて試論が掲載されている。時の政権に左右されない教育の独立が必要なのはある意味で当然であると思うが、他方で人事面や予算面で行政の一定の関与がある現状の中でどこまで独立させていけるのか、教育委員会、教育長、指導主事、校長、議会、行政との関係をどう構築していくのか、さらには地域社会、保護者、生徒をどううまくかみ合わせた組織・機構作りをしていくのか、相当困難な難問が山積みだと思う。が、こういう議論はどんどん展開・発展させてもらいたいと思う。