佐藤優「情報読解」の私塾 赤版 日本、北朝鮮、韓国、中国の転換点・篇 佐藤優

2019年2月28日第1刷

 

第1部 この国はどこへ向かうのか

   北方領土・篇 「ロシアにおいて外交は大統領の専権事項」「本気で交渉を行う前にハードルをあげてみせることは外交の世界ではよくある」

   (佐藤さんならではの視点だと思う。この二つのことを知っておけば、昨今のロシアから発せられるメッセージに落胆することなく、正しく読解できるように思う)」

   永田町・篇 「公民権停止中の宗男氏の政治資金パーティーに現職の首相が出席し、あいさつをしたのは憲政史上初のことであろうし、それだけ安倍首相が切羽詰まっていたことだと思う。なぜなら、日本外務省は鈴木宗男バッシングの過程で、イルクーツク日露首脳会談に鈴木氏が関与したことを示す書類を大量に廃棄しているからだ」

   外務省・篇 「四島の帰属問題を解決し平和条約を締結する。一言一句付け加える考え方はない」と断言する安倍首相に対し、当時の外務大臣だった岸田氏の答弁が不明瞭な答弁だったのは外務官僚が政府の立場のなし崩し的変更についてきちんとした説明をしていなかったからだと思うと指摘する筆者ならではの分析はさすがだ。

   沖縄・篇 (大田氏から新しい宿題を出された筆者は)「『沖縄独立論についてどう考えるか』」「沖縄人と日本人が心の底から理解し合う時代が来ることを夢見て、学者活動と政治活動を展開していた」「太田氏の想いを少しでも継承したい」という筆者の想いは本国の人々は寄り添い理解しなければならないと思う。

   日本社会・篇 「同志社を創設した新島襄は、神学部とともに医学部のある文理の壁を越えた総合大学を創ろうとしていた」(目のつけどころがいいですね、本当に)

 

第2部 北朝鮮と米中韓の未来図

     「VX事件で実行メンバーに中毒症状が出た際の治療薬をつとめていた中川智正・元死刑囚」が、「金正男氏の遺体からVXが検出されたと発表する前に、この事件で用「いられた毒物はVXであるとの見方を示す手紙を米国の毒物専門家に送っていた」とする報道記事に接して、中川元死刑囚からVXを用いた殺人で、中川氏自身が経験したこと、さらにVXを殺害に用いるとするならば、どのような手段があるかについて、詳細な聞き取りをすべきであった」と指摘した箇所を読んだ時は、思わず唸った。確かにその通りだ。

     「北朝鮮朝鮮中央通信は(2018年4月)30日、最高人民会議常任委員会が同日、北朝鮮の標準時間を30分早める政令を採択」 これは元々標準時間を30分遅らせてた北朝鮮が時間を切断するのではなく同じ時間を生きることで「共同体」意識を強化するのに役立つ、そしてそれは日本の敵イメージと結び付いていくことでより一層厄介な問題に日本が向き合う必要が出てくると指摘する。そんなニュースを私はすっかり読み飛ばしていた。さすが佐藤さん。