イスラエルとユダヤ人に関するノート 佐藤優

2015年2月23日初版発行

 

帯封「イスラエル支持は、日本の国益に資する 国際政治と歴史と聖書に照らして書き下ろされた筆者の極秘の考察ノート」「私(佐藤)は、イスラエルユダヤ人から学んだ事柄を記した。イスラエル人の愛国心、さらにそれを支える神理解から、日本国家と日本人が生き残るための知恵を学ぶことが、私が本書を著した目的である。【まえがきより】」

 

目次と内容の一部抜粋(要約)が混在する形になってしまったが、佐藤優さんが極めて敬虔なキリスト教信者であることがよくわかる本であり、また高度なインテリジェンスを用いて日本とイスラエルがどうあるべきかについて著者の思考が具体的なケース・事例を通じて詳しく書かれていて大変勉強になった。

 

目次

まえがき

 重要なのは、元イスラエル高官が述べている「政府の社会に与える機能の変化」、「民族問題は解決されたのではなく、停滞期に入っていたに過ぎない」、「古典的戦争観と現代的戦争観の相克」という切り口だ。さらに言うと、「人間の性格は百年程度の短期間に根本的に変化することはない。波動が繰り返すだけである」という突き放したものの見方、考え方だ。

 「全世界に同情されながら死に絶えるよりも、全世界を敵に回しても生き残る」という気概を持つイスラエル人の愛国心、さらにそれを支える神理解から、日本国家と日本人が生き残るための知恵を学ぶことが本書を著した目的でもある。

Ⅰ 私とイスラエルについての省察ノート

 1話 なぜ私はイスラエルが好きか

 2話 旧約聖書の再発見とヨムキプール戦争の教訓

 3話 獄中の私を支えてくれたイスラエルの友人たち

Ⅱ ロシアとイスラエルの考察ノート

 4話 モスクワのオランダ大使館領事部

 5話 ナティーブの対ソ秘密工作

 6話 ロシア・グルジア戦争を分析するイスラエル専門家の視点の重要性

 7話 プーチン露大統領のイスラエル訪問の意義

 8話 イスラエル外交に働く目に見えない力

 9話 シャロン元首相とロシア

Ⅲ 日本とイスラエルの考察ノート

 10話 『スギハラ・ダラー』から杉原千畝を読み解く

 11話 東日本大震災をどう考えるか

 12話 福島第一原発事故に関するあるイスラエル人との会話

 13話 F35問題をめぐる武器輸出三原則の解釈がイスラエルに与える影響

     最新鋭ステルス戦闘機F35に関し日本国内で製造した部品の輸出を、武器輸出三原則の例外措置として認める方針を固めた政府の態度について、外務省の一部幹部に慎重論が出ること自体、F35問題でテロとの闘いに関し日本は米国やイスラエルとは別の価値観を持った君であるという認識を強めることになり、ナチスドイツのユダヤ人女性に対する人権侵害と同等の問題であると位置づけようとする韓国の慰安婦問題に飛び火させるものである、という分析は、佐藤さんならではの鋭さがある。

 

14話 国家安全保障会議(日本版NSC)とイスラエル・ハイテク産業

 

15話 画期的な日本・イスラエル共同声明

    2014年5月にネタニヤフ首相が来日した際の安倍首相との共同声明(日本・イスラエル間の包括的パートナーシップ構築に関する共同声明)は、世界最先端の能力を有するイスラエルのサイバー技術を日本が導入する可能性に道を開くものとして画期的であると評価する。

 

Ⅳ イラン、シリア、北朝鮮の考察ノート

 16話 中立国と情報工作

 17話 イラン危機と日本

 18話 イスラエルとイランの関係をどう見るか

 19話 イランと「国交断絶」したカナダに学べ

 20話 孫崎亨・元外務省国際情報局長のイラン観について

 21話 北朝鮮によるシリアの核開発支援にイスラエルはどう対処

 22話 シリア情勢を巡る日本の独自外交

    イスラエルとイランの関係、シリアと北朝鮮の関係、日本のイラン外交について知らなかったことが多いと痛感。この分野の勉強をしっかりせねば。

 

Ⅴ キリスト教神学生への手紙

 23話 ある神学生への手紙-『トーラーの名において』の評価

 24話 あるキリスト教神学生からのメールーユダヤ民族の否定について

25話 反ユダヤ主義の歴史について1

26話 反ユダヤ主義の歴史について2

   民族とは何か、という事を深く考えさせられる内容だった。

   そういう問題意識を含め、「未熟な思想で社会と世界を断罪する癖がついてしまうと、その後の知的、人間的成長に悪影響を与えます」という一文は私の心にぐさりとささった。やはり色々な勉強を若い時からやり続けることが重要だ。今さら遅いかもしれないが、諦めずにこれからも色々勉強しようと思う。またどういう本をどういう順序で読むのか、という問題はこれまであまり意識してこなかったが、偏頗・浅薄なものにならないようにこの問題もこれからはしっかり考えなければならないと痛感する。

27話 キリスト教イスラエルー『キリストの火に』を読む

この話では、著者が日本キリスト教会で洗礼を受け、その後、日本基督教団に転会し、真剣に日本国家、日本民族について取り組もうとしていることがよくわかる。

同志社大学の先輩である財津正彌先生の本を通じて知った、手島郁郎先生の、日本のキリスト教の誇りであると述べ、手島先生の、死を覚悟しないような信仰ならせぬ方がいい、もう死んでも構わぬというくらいの尊いものがあるから、私たちは命かけて神に信ずるんじゃないですか、との教えを引用しつつ、神を知らぬ三島由紀夫でさえ日本を真の日本の姿に取り戻すために共に死のうと腹をかき切って死んでいった姿と、ソ連チェコ侵攻に抗議して焼身自殺を遂げたチェコ兄弟団福音教会のヤン・パラフ君の姿には通底するものがあると著者は分析し、宗教改革ヤン・フスの魂を引き継いだチェコのフロマートカ神学を通じて、キリスト教徒は他のいかなる宗教を信じる人やどの宗教を信じない人よりも、国家と民族をより深く、より現実的に理解することができると確信を持つようになったと述懐する。

28話 ホロコースト生き残りの証言

あとがき