ホイットマン詩集 白鳥省吾訳

昭和40年12月20日初版発行 平成2年2月20日15刷発行

 

 訳者の巻末解説には、「民主主義の経典といわれるアメリカの詩人ワルト・ホイットマンの詩集『草の葉』は、民主主義の指標たる自由と平等と友愛を徹底して歌った詩として、世界無比のものであろう」、「ホイットマンの詩は先ずエマーソンに認められた。『草の葉』の驚くべき天分についてエマーソンは言った。『これはアメリカが元来有した叡智のうちで最も卓抜な作品である。私は非常に嬉しい、私はここに無類な物を発見する。・・・その優れた美点は、言わば確固として人を鼓舞するものである』と。」、「彼の詩は、民主的精神と科学と偉大なる宗教との融合である。それに依って現代の世界は人類の友愛の観点に導かれる。宇宙の科学的見地の中に精神的結合があるのである」、「日本に於けるホイットマン研究は詩人が逝去した明治25年夏目漱石が紹介して以来、かなり豊富に翻訳された。私のホイットマン訳詩集は、大正8年5月新潮社発行の30歳の時以来、絶えず増補修正しつつ、『草の葉』全訳を志しており、今まで5冊も出ているが、今年76歳にして未だ完成せず、日暮れて道遠しとはこのことであろう」とある。

 

草の葉

 私自身の歌(抄)

・・死の終わった瞬間に生命は現れる。凡ては向上し進展し、何ものにも滅びるものはない。死ぬということは世人の想像と異り、もっと幸福なものだ。

 

 大道の歌 14

 さあ行こう! 苦難と悪戦を突きぬけて!

 指示された目標は取消すことが出来ない。

 過去の苦闘は成功したか、何を成功したのか、君自身か、君の国家か、それとも「自然」か、今こそ私をよく理解したまえー何事に依らず成功の実現に非常の苦闘を要すべき或物の出てくるは事物の当然である。

 私の叫びは戦の叫びである。私は勃々たる反攻を鼓舞する。

 私と共に行く者はよく武装して行かねばならない。

 私と共に行く者は節食と貧乏と憤怒の敵と荒廃とに屢々出遭うのだ。

 

 大道の歌 15

 さあ行こう! 大道は私の前にある!

 それは安全だー私はそれを試したー私自身の足でよく試したー引き留められてはならない!

 

 紙は書かないで机の上に、本は開けずに書棚に置け!

 道具は仕事場に放っとけ! 金は儲けずに放っとけ!

 学校は立った儘に! 教師の嘆き声に構うな!

 説教者には壇上で説教させ、弁護士には法廷で論じさせ、裁判官には法律を説明させろ!

 

 同志よ、君に私の手を与える!

 金銭よりなお尊い私の愛を君に与える

 説教や法律の代わりに私自身を君に与える。

 君も君自身を私にくれないか、私と一緒に旅に出ないか。

 私達の生ける限りお互にしっかり結び付いて行こうではないか。

 

 有名な一節の、次の内容を知ることが出来た喜びに浸っている・・・。

 ホイットマンエマソンなど、超一流の先人たちの智慧を今後も学び続けたい。