尾崎高揚の「金色夜叉」 ビギナーズ・クラシックス 近代文学編 山田有策

2010年9月25日初版発行

 

尾崎紅葉が読売新聞に6年間にわたって連載。最初に大ヒットした新聞小説。紅葉の死から4年後の明治40年朝日新聞夏目漱石を入社させ「虞美人草」を連載。

 

前編

間貫一は15歳で孤児となり、鴫沢(しぎさわ)家に引きとられ、第一高等中学校在学中。卒業後は大学に進学する予定。鴫沢家の一人娘の宮の婿に迎えられることになっていた。

ところが、ある日、富豪の富山唯継の嫁にやることを承知してくれと言われた寛一は、熱海に出掛けた宮を追いかけ、熱海の海岸で、有名な言葉で宮をなじり蹴飛ばしそのまま出奔してしまう。

 

中編

貫一は高利貸・鰐淵直行の片腕となる。4年ぶりに寛一は宮と思いがけず再会を果たす。宮が夫に連れられて田鶴見子爵邸を訪れた際、離れに貫一を見つけた。子爵は高利貸に資金援助をしており、そのため貫一が来ていた。高利貸にのめり込んだ寛一は恨みをかった2人組に夜道で襲われる。

 

後編

 事件は新聞で報道され、そこへ貫一の育ての親の鴫沢隆三がやってくるが、貫一は顔を合わそうとはしない。そのころ、鰐淵の家を一人の白髪の女性が訪ねる。鰐淵によって息子雅之が連帯保証人の公文書偽造の罪に落とし込められて刑務所にいれられた女性だった。白髪の女は激しい風が吹いた晩、姿を見せなかったが、放火で鰐淵の家は焼失し、夫婦は焼死。

 

金色夜叉

貫一はかつての親友荒雄譲介と宮に偶然再会する。宮は自分の過ちをわびるが貫一は許さない。荒尾は寛一に高利貸を直ちにやめろと忠告する。嫉妬の鬼と化した満枝が宮を刺し殺そうとして凄まじい修羅場となり、宮は満枝の心臓をえぐる。寛一は茫然として見守るだけ。宮は自らのどを突き、おれも死ぬ、と叫んだところで、目が覚める。

 

続続 金色夜叉

貫一は貸付先の調査のために塩原温泉に向かう。そこで心中しようとする男女、一人は富山唯継に身請けされそうになったお静、もう一人はそれを救おうと大変な借金をせおった狭山を救ため、二人を引き取る。

 

新続 金色夜叉

狭山とお静を引き取った寛一の下に宮の許しを乞う手紙が届く(が、作者の死により未完)。

 

裏表紙に「許嫁・宮に裏切られた寛一は、金本位の世の中へ復讐を誓い、冷徹な高利貸〈金色夜叉〉となる。『今月今宵のこの月を・・・』の名文句で有名な熱海の別れや、寛一をめぐる女たちの壮絶な修羅場など、尾崎紅葉晩年の渾身作名場面を凝縮。寛一・宮の恋の顛末、個性的な登場人物たち、偽続編の存在など、近代文学研究の第一人者による詳細な解説とコラムで名作の新たな魅力に迫る。平易な現代語訳で、難解な原作を手軽に1冊で味わえる」とあったが、そのとおりであった。