2023年3月10日第1刷発行
裏表紙「憲法は国家権力を縛り、単純多数決民主主義の暴走をくい止める」
目次
第1章 憲法と平和主義に関する基礎知識
Q01 憲法とは何ですか?
A.暴走する危険性のある国家を縛る法のことです
Q02 立憲主義とは何ですか?
A.憲法に従って国家の運用を行う考え方のことです
Q03 憲法は平和主義についてどのように規定しているのですか?
A.前文で基本原則を示し、9条で平和に向けての目的と手段を示しています
Q04 自衛権とは何ですか?
A.侵害を排除する国家の権利で、個別的自衛権と集団的自衛権とがあります
Q05 憲法学界では憲法9条をどのように解釈してきたのですか?
A.1項と2項でそれぞれ2種類の解釈があります
Q06 平和的生存権とは何ですか?
A.憲法前文などから保障される権利ですが、捉え方については諸説あります
Q07 政府は憲法9条をどのように解釈してきたのですか?
A.「戦力」の保持を認めていませんが、「実力」の保持は認めています
Q08 政府は集団的自衛権をどのように解釈してきたのですか?
A.日本は保持していても行使できないと明確に解釈してきました
Q09 憲法9条の下で、日本の平和の現実はどうだったのですか?
A.憲法9条の下での制約もありましたが、形骸化の道を歩んできました
第2章 戦争法・安全保障政策の問題点とは何か
Q10 なぜ安倍政権は「解釈改憲」(=集団的自衛権の行使容認)を行ったのですか?
A.憲法改正は困難と判断したためです
Q11 第1次安倍政権の安保法制懇報告書(2008年)の4類型とは何ですか?
A.限定的な集団的自衛権行使・PKOでの駆けつけ警護・多国籍軍支援です
Q12 第2次安倍政権の安保法制懇報告書(2014年)の6類型とは何ですか?
A. 集団的自衛権についての新提案だけでなく、グレーゾーンの事態の提案もあります
Q13 安倍首相が主張した「積極的平和主義」とは何ですか?
A. 戦争に肯定的な「積極的戦争主義」ともいえるものです
Q14 集団的自衛権行使を容認した閣議決定(2014年7月1日)はどのような内容なのですか?
A. 「武力行使の新3要件」を内容としています
Q15 集団的自衛権行使を容認した閣議決定(2014年7月1日)には手続的にどのような問題があるのですか?
A. 憲法改正の限界に関わる基本原理の変更を憲法改正ではなく、解釈改憲したことです
Q16 集団的自衛権自体にはどのような問題がありますか?
A. 主に大国が小国に侵攻・侵略する時に悪用されてきました
Q17 2015年のガイドライン再改定はどのような内容なのですか?
A. 自衛隊が平時からグローバル有事まで米軍に兵站(活動)を行うという内容です
Q18 2015年ガイドライン再改定にはどのような問題があるのですか?
A. 憲法に抵触しているのはもちろんのこと、日米安保条約にも抵触しています
Q19 戦争法はどのような法律なのですか?
A. 2014年閣議決定を具体化する11本の法律です
Q20 グレーゾーンの事態に自衛隊を出すことの問題は何ですか?
A. 一気に軍事衝突に発展する危険性があります
Q21 PKO法の改正にはどのような問題があるのですか?
Q22 米軍等の武器等の防護にはどのような問題があるのですか?
A. 平時から集団的自衛権を行使するという問題があります
Q23 国家安全保障会議とはどのような組織ですか?
A. 内閣の中にいわば小さな内閣を作って緊急事態に対処する組織です
Q24 秘密保護法とはどのような法律なのですか?
A. 防衛・外交・警察情報を行政機関が一方的に秘密指定してしまう法律です
Q25 秘密保護法と戦争法が結びつくとどうなるのですか?
A. 国会にも国民にも情報を知らせないで戦争に突入する危険性があります
Q26 戦争法は憲法との関係でどのような問題があるのですか?
A. 手続面でも内容面でも憲法上多岐にわたる問題があります
Q27 朝鮮と中国の脅威を考えると戦争法が必要なのではないですか?
A. 過剰な朝鮮・中国脅威論は「バカ派」の議論であり、戦争法もいりません
Q28 「反撃能力(敵基地攻撃能力)」は必要なのでしょうか?
A. 必要ないし、従来の政府解釈からしても許されません
Q29 ロシアによるウクライナ侵略をどう考えますか?
A. 違法な戦争であり、事前の安全保障の枠組構築が大事です
Q30 防衛費をGDP比2%にした方がいいのでしょうか?
A. そのようなお金があるなら、教育や社会保障に回すべきです
第3章 9条等改憲の問題点とは何か
Q31 憲法96条改正先行論には他にどのような問題がありますか?
A.自民党も安倍首相も都合のいい議論しかしませんでした
Q32 憲法改正手続法にはどのような問題がありますか?
A.勧誘広告規制が不十分な一方、公務員・教員の運動規制があります
Q33 安倍首相の「9条加憲論」とは何でしょうか?
A. 9条の1項と2項は残して自衛隊の存在を明記する条文を追加するものです
Q34 「9条加憲論」は戦後の改憲論の中でどのように位置づけることができるのでしょうか?
A. 手強い改憲論ですが、改憲論としては平和運動により後退させられています
Q35 自民党の「9条加憲」条文案はどのように解釈できますか?
A. 自衛隊が首相の判断一つで海外で集団的自衛権を行使できるようになります
Q36 「9条加憲論」にはどのような問題があるのですか?
A. 自衛隊の活動に歯止めがなくなります
Q37 自治体が自衛官募集の協力をしないから9条改憲が必要なのですか?
A. 現在の「協力」自体に問題がありますし、募集の困難さは自衛隊にも原因があります
Q38 その他改憲3項目案にはどのような問題があるのですか?
A. 教育の無償化にも合区解消にも改憲は不要ですし、自民党案は危険です
A. 2005年自民党改憲案と違って復古色が前面に出た改憲案です
Q40 12年自民党改憲案は平和主義をどのように変えようとしているのですか?
A. 全面的な集団的自衛権を行使できる国防軍を設置するなど大幅に変えています
Q41 12年自民党改憲案は国家と国民との関係をどのように変えようとしているのですか?
A. 国家の論理で人権の制約を可能とし、国民の義務を大幅に増やしています
Q42 12年自民党改憲案の「地方自治」規定にはどのような問題がありますか?
A. 自治体に国の防衛・外交政策などを従わせることになります
Q43 12年自民党改憲案の緊急事態条項にはどのような問題がありますか?
A. この改憲だけでもナチスの再来をもたらしかねない危険な内容です
Q44 4項目改憲案の緊急事態条項にはどのような問題がありますか?
A. 有事に適用可能で、政令政治をもたらす危険性があります
Q45 コロナ対応のために憲法に緊急事態条項が必要なのでしょうか?
A. 必要ないし、憲法25条理念の実現こそ大事です
Q46 そもそも改憲をどう考えたらいいのですか?
A. 憲法によって縛られる国家権力の側から出てくる改憲論は要注意です
第4章 改憲論にどう対抗すべきか
Q47 「立憲的改憲論」は対抗論になるのでしょうか?
A.9条改憲派の土俵に乗ってしまう議論です
Q48 「平和主義者・天皇」に期待すべきなのでしょうか?
A.天皇という権威にすがるのではなく、私たちの主体性が求められています
Q49 日本国憲法の平和主義は世界でどのように位置づけられるのですか?
A. 戦争違法化の最先端を行く憲法といえます
Q50 日本国憲法をどのように考えたらいいのですか?
A. 不十分な点はありますが、先進的な憲法としてまずは理念の実現が先です
Q51 立憲野党は自民党政権の対抗勢力になれるのでしょうか?
A. 労組と市民の共闘を土台に結集すれば十分対抗できます
Q52 今後、市民はどうすればいいのでしょうか?
A. 「労組と市民と野党の共闘」に参加していくことです
左の立場というか、野党の立場から、自民改憲論に対して批判的に論じたもの。憲法学を専門とする学者の本なので、もう少し自民党と野党との中間的立場から論じているのかと思いきや、自民改憲論に反対するという視点からのみ立論されているので、中間的立場でどういう議論が展開されているのか知りたいという人からすると、少し物足りなさを感じる。
自民の問題意識についても一定程度共有しつつ、しかし現在の自民の考え方は危ないから、ここはいいけど、ここはダメというようなスタンスの本が読んでみたい。