乱鴉の空 あさのあつこ

2022年8月30日初版第1刷発行

 

シリーズ11作目。

主人公の信次郎が獲り方に追われ、ある日突然失踪。伊佐治も全く知らない。伊佐治も仮牢に入れられて調べを受ける。清之介が他の同心に頼んで伊佐治は早期に解放されるが、信次郎はどこへ行ってしまったのか。与力から行方を問われる伊佐治だが、本当に知らないので答えようがない。失踪直前の信次郎の行動を清之介から尋ねられた伊佐治は引っかかった1件を追うことに。その矢先、手に花火の火傷跡がある死体が川に流れ着く。伊佐治が遺体を調べていると信次郎の獲り方に現れた別の同心が現れて有無を言わさずに遺体を引き取っていく。清之介の下には源庵が生前中に面倒を見ていた手妻が上手な曰く有り気な若者が現れて遠野屋で面倒を見ることになる。再び手に火傷跡がある男の死体が見つかった。伊佐治の子分が調べていると再び例の同心が現れて死体を運び去っていく。信次郎の屋敷に向かう清之介と伊佐治。燈台下暗しだった。信次郎は贋金の入った巾着を出し、聞き慣れぬ斗滑衆(とぬめしゅう)なる者たちの技だと説明する。伊佐治が引っ掛かった1件は刺された男が逃げた後に殺された事件だったが、その男は小さな祠に体を隠し切れずに死んでいた。その姿に疑問を持った信次郎が調べた遺体から油紙に入った金子を見つける。後でそれが贋金の見本だと気付く。遠野屋の番頭が備前守に運ぶ途中に信次郎は高級な品々であることを認め、備前守が贋金の出所であることを嗅ぎ取り、贋金の見本を持ったために獲り方に狙われることに。しかもそれには公儀すら絡んでいる可能性があった。贋金を取り締まる側とこれを利用する側との目に見えぬ暗闘の中で何が起きていたのか。誰もが責任を取ることがなく、逃げ出した斗滑衆(とぬめしゅう)たちの一部がいずれも皆殺され、結末含めて後味の悪さが残る。