花下に舞う あさのあつこ

帯封「累計77万部!『弥勒』シリーズ最新刊 もっと異形、もっと歪、もっと奇怪 同心小暮信次郎×商人 遠野屋清之介 亡き母の過去を探る信次郎。商いに生きると決めた清之介。事件は、殺された夫婦の驚愕の死に顔から始まった。」

 

シリーズ10作目。

佐賀屋の徳重とお月の夫婦の死に顔が尋常でないことに興味を持った信次郎と伊佐治。徳重は口入屋の傍らで阿漕な金貸しをしていた。奉公人のおさいから夫妻のことを聞き出す二人。先のお内儀の実家今の屋にも貸付けていた。裏木戸の閂が外れたままになっているのも気になる。抽斗から舞扇が出て来た。偶然街中で清之介と信三に出会った伊佐治が佐賀屋の一件を話すと信三の口から今の屋の名前が出る。今の屋の主人榮三郎が亡くなった葬儀にまで取り立てにきた徳重の非道さが調べから浮き上がる。信次郎は母の命日に墓参りをし、住職慶達から生前の母の様子等を聞く。寺の百両箱から金子が盗まれた時に見事に手口を推量した母。遠野屋の手代弥吉と同じ長屋にすむお高が遠野屋に来ると推測した信次郎が遠野屋に久しぶりに現れる。お高が今の屋の幽霊を見て怖くなり長屋を飛び出て弥吉が店まで連れてきた。死を確かめた医者も徳重から借金し、葬式を偽装した今の屋は生きていて、医者もグルになっていると読んでいた信次郎。徳重とお月が驚いた顔を死んでいたのも頷ける。今の屋という幽霊を見て殺されたのだから。お高を囮に使って今の屋のお内儀にお高が今の屋を幽霊で見たという。するとお内儀はお高に金を握らせて他所で言わないでくれと頼む。お高に仕立ての仕事を依頼して出来上がった物を持ってきたお高に手をかけようとした今の屋が現れたところで御用となるはずだった。が、今の屋がその場で自害してしまった。事件は片づいた。が閂の一件が気になる。おさいから再び話を聞く信次郎。お月が舞を習っていた、桐箱に舞扇を仕舞い、扇を袱紗に包んで桐箱を竈で燃やした。その晩に今の屋に徳重とお月が殺された。なぜか。信次郎は更に謎を解き明かそうとする。扇を扱う安芸屋を訪ねる伊佐治。扇は安芸屋が女郎時代のお月に貢いだ品だった。それが偶然佐賀屋で再会し扇をねだられて届けた。伊佐治が安芸屋から話を聞いている間に安芸屋のお内儀お佐江が服毒する。遠野屋の催事に協力する三郷屋吉治と吹野屋謙蔵はお高の縫い付けを絶賛する。安芸屋の亭主のふりをして安芸屋と出来ていたお月に桐箱に逢引の言伝をし、あの夜閂を開けておいたら、今の屋が入ってきた。お月が驚いた顔をしたのは幽霊を見たからではなく安芸屋と思っていたら今の屋が入ってきたからだった。結局、榮三郎とお佐江が諮った事件だった。が、この二人の接点はどこにある?と伊佐治と清之介は訝しがる。が信次郎は伊佐治に何も指示しない。住職と清之介を呼ぶ信次郎。かつて百両箱を作った重蔵は徳重と名前を変えて生きていた。賭場の借金に苦しんでいた徳重を利用していたのは賭場の元締をしていた住職だった。恐らく徳重とばったり出会った住職が徳重殺しをたくらみ、お佐江に毒を渡して、すべてを裏で絵を描いていた。口封じに動く住職と刺客の相手をさせるために、わざわざ清之介を事前に読んでいた信次郎。一度は閉じた賭場を再開した住職を捕まえるために清之介の前ですべてを明らかにした信次郎だったが、その心の中には、どうやら賭場を閉じただけで不問に付した当時の母の憤った舞を幼い頃に目に焼き付けたのを思い出したのがすべての事件の鍵だった。

 

結構、後半から、複雑な話が輪を懸けて複雑になっていった。。。