ドラッカーとオーケストラの組織論 山岸淳子

2013年3月4日第1版第1刷

 

「表紙裏マネジメントの父と呼ばれるウィーン生まれのピーター・ドラッカー(1909~2005)は、オーケストラに“未来の組織”を見ていた。なぜドラッカーはオーケストラという組織に注目したのか?さまざまな楽器を受け持つプロの演奏家集団が、指揮者のもとで高度にマネジメントされた組織になったとき、一人の巨匠演奏家の限界をはるかに超えた音楽を作り出すことができる。そのことをドラッカーは理解していた。指揮者の役割、リハーサルの舞台裏、各地のオーケストラの歴史や新しい試みなどからマネジメントの本質が浮かび上がる意欲的な論考。」

 

目次

第一章 ドラッカーの言葉とオーケストラ

第二章 オーケストラ組織論①―プロフェッショナルとしての演奏家

第三章 オーケストラ組織論②―リーダーとしての指揮者

第四章 ドラッカーの見た都市とオーケストラ

第五章 マネジメント

第六章 「未来の組織モデル」としてのオーケストラ

 

第1章

経営管理者は指揮者である

経営管理者は、部分の総計を超える総体、すなわち投入された資源の総計を超えるものを生み出さなければならない。例えていうならばオーケストラの指揮者である(26p)」『現代の経営』

・情報化組織におけるコミュニケーション

「一人の指揮者の下で、数百人の音楽家が共に演奏できるのは、全員が同じ楽譜をもっているからである(46,47p)」『情報が組織を変える』

「情報化組織における主役は、専門家であって、トップ経営者でさえ仕事の仕方については口出しができない。指揮者はある楽器の演奏方法が分からなくても、その楽器の奏者の技術と知識を、いかに生かすべきかを知っている。これこそ、あらゆる情報化組織のリーダーが身につけるべき能力である(47p)」『情報が組織を変える』

・明日の組織モデル

「偉大なソロを集めたオーケストラが最高のオーケストラではない。優れたメンバーが最高の演奏をするものが最高のオーケストラである(53p)」『ネクスト・ソサエティ

 

第2章

・専門性の獲得と維持

「ピアニストは、何か月も飽きることなく音階を練習する。技能はごくわずか向上するだけである。だがこのわずかな向上が、すでに内なる耳によって聴いている音楽を実現させる」「成果をあげる能力とは、積み重ねによるものである(71p)」『ポスト資本主義社会』

 

第3章

・指揮者を目指す者、指揮者に望むもの

「実りには時間を要する。知識を基礎とする新産業の正否は、どこまで知識労働者を惹きつけ、留まらせ、やる気を起こさせるかにかかっている(130p)」『プロフェッショナルの条件』

 

第6章

・聴衆もオーケストラの一員

「コミュニケーションは、送り手ではなく受け手からスタートしなければならない(299p)」『マネジメント』

 

NHKのラジオ英語2023年4月号のインタビューで取り上げられていた指揮者のレナードレナード・スラットキンの話を思い出した。演者も皆プロが集まって、楽団ごとに音がある、その音を指揮者が色付けをしていく、というのが指揮者の役割だというようなことを言っていたと思う。まさしくオーケストラのマネジメントという意識での発言だったんだな、と改めて思う。