丸腰国家~軍隊を放棄したコスタリカ 60年の平和戦略~ コスタリカ研究家 足立力也

2009年3月1日初版第1刷発行 2017年9月30日第3刷発行

 

どういう経緯でコスタリカが軍隊を放棄することになったのか?その経緯を知りたくて資料を探していたところ、この本にようやくたどり着いた。少し古い本だが、多角的にコスタリカのことを取り上げている。良いところも悪いところもそれぞれあるというのが良くわかった。

第1部「『丸腰国家』コスタリカの真実」は第1章から第4章まで、第2部「『丸腰国家』をつくる人たち」は第5章から第8章までで構成されている。

軍隊放棄の経緯についても最も有力な理由とされているのは財政的資源が厳しかったというもの。もっともそれだけではなく、内戦に勝利したフィゲーレスが指導した反政府勢力が、内戦に敗れた旧政府軍を解体し、フィゲーレスが自らの支配を盤石にするために武器を取り上げ組織を徹底的につぶすためにフィゲーレスは軍備放棄を宣言した。1949年11月7日新憲法が発布され即日施行。12条に非武装憲法を定め丸腰国家が誕生する。

更に1983年11月17日、モンヘ(当時の大統領)が積極的永世非武装中立宣言を示す。スイスは消極的永世非武装中立という立場を取っている。この積極的というのは中立にかかり、誰かと誰かが争っていた場合にはどちらの味方をしないが仲介者としては積極的に介入するという意味。アリアス大統領は内戦の中米和平交渉に乗り出し1987年ノーベル平和賞を受賞。コスタリカ憲法31条は「国はすべての政治的避難民の避難地である」と定めている。このあたりまでが第1章「コスタリカはどうやって軍隊をなくしたのか」、第2章「軍隊がなくても大丈夫なのか」。第3章では「コスタリカには本当に軍隊がないのか」という項目で警察組織が軍隊化していないのかを検証し、軍事化していると指摘する向きもあるが、警察の脱軍事化というメンタリティーの完成途上にあると分析している。第4章「コスタリカは軍隊を持てるのか」というテーマで法的には持てるが、「持たない」し「持てない」という解釈を共有していると分析。

第2部ではコスタリカという国を多角的に分析している。国家予算の5分の1を教育費に割いており、GDP比でも日本の2倍を教育費に充てている。コスタリカの刑務所は塀がなく、愛の部屋まで設置されている。そこまで好待遇の理由について所長は受刑者に人権意識を目覚めさせることで更生が図られると説明。この刑務所を出た元受刑者の再犯率は2割程度にとどまっているとか。男尊女卑の問題は現存するが、国会議員の3割以上は女性。

2000年度には父親に認知されない赤ちゃんが5割を超えたので親権責任法が制定され母親が父親を指名できる制度に切り替わった。医療も無料で受けられる。不法入国者もその例外ではない。ただ賄賂文化は横行しており著者も税関や交通警察官から露骨に賄賂を要求され止む無く応じた経験談が紹介されている。毎年12月1日は軍隊廃止記念式典を挙行し国家行事として式典を執り行っている。平和とは終わりなき闘いなのです、という言葉で毎年締めくくられているようだ。最後にコスタリカの人々は平和のイメージを反戦という単純かつ否定の否定で捉えるのではなく肯定の肯定で捉え、人権・民主主義・文化・尊厳・環境など、日常の身近なところにあると捉え、自分自身の内面の問題であると捉えているという。

果たして日本はこの先どう進むのであろうか。日本でも単純に同じことが出来るわけではないだろうが、やはり理想は理想として維持して追究していきたいと思う。