ハーバードはなぜ日本の「基本」を大事にするのか 佐藤知恵

2020年6月25日1刷

 

「終章 日本の強みを自覚せよ」は、日本人を元気にしてくれる内容だ。

・国のブランドランキングで1位

 フューチャーブランド・カントリー指数ランキングで1位。アンホルトGfK国家ランキングでは2位。テクノロジー、インフラストラクチャ、文化遺産、医療、教育などの分野で高く評価されている。

・経済複雑性指標(ECI)は1995年以降1位を維持している。マサチューセッツ工科大学ハーバード大学が共同で開発した指標。輸出品の多様性、偏在性、製造可能国数等を分析することによって製品やサービスを生み出すための国のケイパビリティ(企業でいうところの組織能力)を測定。

・大企業もイノベーションを起こし続けている日本の独自・独特の方法を自信を持って追究せよ、とするナンダ教授の発言は日本が自信を取り戻すのに有益だ。

 

 終章に辿りつく前に、「序章 なぜ日本はハーバードで人気があるのか」で、テッセイ、トヨタ楽天が定番教材になっていることを紹介しながら、日本の企業文化の中に「お金よりも大切なことがある」に驚く学生の声を紹介する。「第1章 イノベーション」ではホンダジェットコマツのダントツ経営、ディスコの「個人ウィル会計」を取り上げる。「第2章 歴史」では安藤百福を、「第3章 起業家精神」では宇宙ゴミ清掃に挑むアストロスケール、リクルートを、「第4章 戦略・マーケティング」ではAKBのインドネシア進出戦略、「柿の種」のアメリカでの失敗、「第5章 リーダーシップ」ではソニーのV字回復、福島第二原発を救ったチーム増田の「心理的安全性」を詳しく紹介している(「健全な恐れ」=納期、競合等、成長するために必要な恐れと、「不健全な恐れ」=他人からどう思われているだろうかを過剰に心配することから生じる、のうち後者を取り除くことが「心理的安全性」を創出するために不可欠であるとエドモンドソン教授は2019年に著書で指摘)、「トヨタ」の中でアメリカの工場内にアンドン文化をどうやって定着させるかについても、アメリカ人は解雇を恐れて中々アンドンのひもを引いてくれなかったが、ここでも心理的安全性を確保することができると問題がクリアーできたとする。その上で上記「終章」がある。

 為になるし、前作の『ハーバードでいちばん人気の国・日本』も機会があれば読んでみたい。