審判 フランツ・カフカ 本野亨一/訳

昭和28年3月30日初版発行 令和5年8月25日56版発行

 

裏表紙「ある朝、アパートで目覚めた銀行員ヨーゼフ・Kは、突然、逮捕される。Kはなぜ逮捕されたのか、まったく判らない。逮捕した裁判所もいっさい理由を明らかにしない。弁護士を頼んでも要領をえず、実際に法廷に出ても、何も明らかにならない。正体不明の裁判所と罪を知らないKのあいだで、はてしない問答がつづくのだが…。「城」「アメリカ」と長編3部作をなす、未完の傑作。」

 

「第1章 逮捕 フラウ・グルバハとの対話 ビュルストナーという女」

銀行員のKがある朝とつぜん逮捕される。二人の男がやってきて、Kは悪いことをした記憶もなく、逮捕の理由も全くわからない。Kの住むアパートの家主グルバハ夫人はよそよそしく、同じアパートに住むビュルストナー嬢の登場もどういう意味があるのか。Kは別に連行されるわけでもなく、逮捕を伝えてきた男たちには、銀行に行ってください、と言われる。Kは普通に銀行に行って仕事をする。

「第2章 最初の審理」

Kは呼出しを受けて審理委員会に日曜日に出向く。時間を言われなかったので午前9時に到着するよう向かったが、似たような建物が沢山あり1時間少々遅参した。予審判事が出てきたが、君は今日逮捕された者が訊問の際に享けるべき利益を放棄したのだといわれ、Kは扉を開いて階段を駆け下りた。背後ではざわめきが起こっていた。ここでもKが逮捕された理由は分からない。

「第3章 誰もいない法廷で 学生 裁判所の事務室」

次の日曜日にKは再び審理委員会に出掛けた。がその日は休みだった。部屋を貸している女と話をしていると、学生が現れ、2人の後をついて行った。屋根裏部屋に連れて行かれると、裁判所事務室があった。女と相談係の男が現れるが、相変わらず訳の分からない状況が続く。

「第4章 ビュルストナーの友達」

ビュルストナーの部屋にモンタークという別の女性が引っ越してきた。Kはビュルストナーに面会を求めたが、一度も返事はなく、ビュルストナーが引っ越ししたのがその返事だった。

「第5章 鞭を鳴らす男」

Kの見張り役が、Kが裁判長に密告してもいないのに密告したとして鞭打ちの刑に処せされた。

「第6章 叔父 レェニ」

訴訟の噂を聞いたKの叔父がやってきてKを友人の弁護士へ連れて行っていった。弁護士は病身で、叔父と力になってくれそうな書記長が話している間、Kは弁護士の看護師レェニにキスをし、肝心な打合せの場にKがいないため、打合せができずに終わってしまう。

「第7章 弁護士 工場主 画家」

裁判は非公開で行われる。起訴状の内容は被告及び弁護人の窺知を許さない。訊問に伴って個々の公訴事実及びその理由が次第に明瞭なる。ある工場主がKを訪ねて銀行にやってきた。工場主は画家のティトレリと知り合いで、この画家が裁判所で働いているらしく、Kのことを知った。工場主はKにティトレリを教え、Kはティトレリに会いに行った。ティトレリは、無罪には本当の無罪、形式的無罪、訴訟の進行妨害の3種類がある、画家のアトリエも裁判官事務室の一つだった。Kは画家から絵を譲ってもらって車の中に乗せた。

「第8章 ブロックという商人 弁護士を解約する」

Kは弁護士への解約を申し出るために深夜に弁護士を訪れ商人のブロックと出会う。彼もKと同じ弁護士に依頼し5年以上経過していた。看護婦のレェニが再登場する。Kは弁護士に今日限りで手を引いてもらいたいと言うと、再びブロックとレェニが登場した(ただしこの章だけは未完)。

「第9章 伽藍」。

Kは銀行の大切な取引先でこの町に初めて来たイタリア人のため町の古蹟を案内した。大伽藍で待ち合わせをしたが、約束の時間にイタリア人は現れなかった。するとKは初対面の僧侶に突然名前を呼ばれ、起訴されていることも知っており、有罪だと決めつけられた。そして僧侶はKが裁判というものに錯覚に陥っていると述べ、この錯覚について記された法律の入門書の話を始めた。掟の前に一人の門番がいて、田舎から一人の男が中へ入らせてほしいと頼むと今すぐ入らせるわけにはいかないと拒絶し、男は何年も待ち続けた。が男の死期が近づいたところで門番は男のためだけの入口で、他の人が入らせてもらえないのも道理であり、門を締めて引き上げた。

「第10章 結末」

Kの31歳の誕生日の前夜、二人の男に連行され、Kの喉首にメスが、もう一人がKの心臓に差し込み、「犬のようにくたばる!」と言い、屈辱だけが生き残っていくような気がした。

この後、「未完の断章」として「エルザのもとへ」「」「」「」「」