「外圧」の日本史 白村江の戦い・蒙古襲来・黒船から現代まで 本郷和人 蓑原俊洋

2023年2月28日第1刷発行

 

表紙裏「古代から現代までの歴史を通観した時、見えてくる日本の国家的DNA。まさにいま学ぶべき教訓がここにある! 命がけで海を渡った遣隋使。戦国乱世を大きく変えた鉄砲伝来。世界を驚かせた日露戦争の勝利。そしてGHQによる占領―。島国ニッポンと『外圧』の赤裸々な関係を、人気の歴史学者と気鋭の国際政治学者が読み解く!」

帯封「この国の岐路にはいつも『外圧』があり!人気の歴史学者と気鋭の国際政治学者が外交・軍事から日本史を一気読み!」

 

目次

まえがき

第1章 遣隋使・遣唐使聖徳太子朝貢外交-

第2章 白村江の敗戦―原型日本の成立-

第3章 モンゴルの来襲―鎌倉幕府の倒壊-

第4章 鉄砲の伝来―戦国時代の終焉-

第5章 朝鮮出兵―なぜ秀吉は大陸をめざしたのか―

第6章 キリスト教の弾圧―鎖国の完成-

第7章 ペリーの黒船―「鎖国」の終わり-

第8章 ハリスと日米修好通商条約―世界に開かれた日本-

第9章 日清戦争日露戦争―東洋の盟主へ―

第10章 第一次世界大戦パリ講和会議―大国の一員として(戦前日本の頂点)-

第11章 大正デモクラシーと排日の現実―脱欧入亜への契機―

第12章 大恐慌満州事変・日中戦争―現状変更と国際政治体制への挑戦―

第13章 開戦期―真珠湾と日本の敗北―

第14章 降伏と占領期―戦後日本の原型の成立―

あとがき

 

・中国の世界観の中で最上位にあるのは「毎年税金を払う地域」、2番目のカテゴリーに入るのが何年かに一度税金を納めにやってくる人々、3番目のカテゴリーが中国皇帝から冊封を受ける国々、4番目のカテゴリーに日本が入り、冊封する必要もない位遠い、いわば放っておかれている国となる(本郷)。

白村江の戦いで敗れたことで国の在り方を真剣に考え、党や新羅に対抗できる国造りを遣らないといけないとの機運が高まって、天智天皇と弟の天武天皇、天武の皇后の持統天皇の3人の時代に日本の原型が出来た。この時期の画期は大宝律令が完成したことにある(本郷)。

・蒙古襲来で集団戦法を鎌倉武士が経験したことで国内でも集団戦法が使われるようになる(南北朝の内乱)。また槍も使われるようになった。北条時宗はモンゴルの使者の首を斬ってしまうアホで、自分の財産を割いてでも褒美を振舞うという意識がなかった(本郷)。

・秀吉の朝鮮出兵は、東アジア貿易の主導権を握るため、明を屈服させようと出兵したもの、明・朝鮮の連合軍に押し戻されて講和させられたのが文禄の役。それでは恰好がつかないので、とりあえず朝鮮だけでも取ろうとしたのが慶長の役だったと思う(本郷)。

・秀吉の時まで日本は世界トップクラスの強国だったが、江戸時代になってから軍事面でどんどん遅れを取っていった(蓑原)。宣教師は一番の悪魔は禅宗だと言っている。一向宗はいいことをすれば天国に行けるというキリスト教の思想に似ているので、商売敵だと言われている(本郷)。

・今、江戸時代の研究者が「鎖国はなかった」と盛んに言っていて、恐らくそれが主流になる(本郷)。日本の開国は国務長官を務めたダニエル・ウェブスターがキーパーソン(蓑原)。ペルーは事前に日本を研究し、日本行きを決めた1851年時点で日本は間違いなく東洋を引っ張っていく大国になると言い切っている。当時そう思っている西洋人は皆無だった。アメリカが力づくで日本を開国させたという歴史認識は修正する必要がある(蓑原)。

・開国に成功したペリーの後で通商交渉のために来日したハリスは通訳のヒュースケンのみ連れてきた。ペリーもハリスも嫌英。ハリスは日本に着くと「イギリスによる植民地争奪戦から日本を守ることが自らの最大の使命だ」と日記に書いている。(蓑原)。

・歴史の転換点は明治維新でも日露戦争の勝利でもなく、大逆事件にある。それまでは学問は学問として守ると桂も原も言っていたのに山縣がそれじゃいかんというようになり天王万歳という歴史学が出来、天皇が神格化されていった(本郷)。

英米のトップ交代を印象付けたのはスエズ危機。ファイブアイズに日本が入れないのは機密を守る法律が緩いのと英語力の問題。戦場という緊迫した状況で完全に意思疎通できなければナンセンスというほかない(蓑原)。

・元老を廃止するのはやむを得ないにしてもそれに代わる機能を憲法に明記すべきだった(蓑原)。日本とドイツは三国干渉以降、基本的には仲が悪い。伊藤博文憲法を学びに行ったり、第二次大戦の三国同盟があるので親しいイメージがあるため、勘違いしている人が多い(本郷)。

マンハッタン計画は米軍事費の25%を占める国家プロジェクト。1946年6月段階で7発保有していたので、戦争が継続していたら更に悲惨な結果を招いていた(蓑原)。