成瀬は天下を取りに行く 宮島未奈

2023年3月15日発行 2024年5月25日17刷

 

帯封「2024年本屋大賞受賞! 坪田譲治文学賞キノベス!2024年第1位ほか空前の14冠かつてなく最高の主人公、現る!」「新潮社主催新人賞で史上初の三冠に輝いた、圧巻のデビュー作!『島崎、わたしはこの夏を西部に捧げようと思う』中2の夏休み、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した-。各界から絶賛の声続々 三浦しをん 柚木麻子 辻村深月 友近 東村アキコ Aマッソ・加納愛子 南沢奈央 村井理子 石田衣良 西川貴教

 

ありがとう西武大津店

14歳の成瀬あかりは夏休み前、コロナ禍に閉店を控える西武大津店に毎日通い、ローカル番組の生中継に映ると幼馴染の島崎みゆきに告げる。中継に毎日のように映る成瀬と島崎だったが、記者は成瀬には意図的に声を掛けない。閉店当日の朝、祖母が亡くなったため葬儀に参加するが、すぐさま西武大津店に向かった。

 

膳所(ぜぜ)から来ました

成瀬は次に島崎に今度は「お笑いの頂点を目指そうと思う」と告げ、島崎とコンビを組み、漫才コンビ「ゼゼカラ」を結成してM-1グランプリ出場にエントリーする。成瀬はM-1の前に中学校の文化祭にエントリーし、嫌がる島崎を説得して大勢の知合いの前で舞台に立つ。当日は予定していたボケと突っ込みの役割が逆転したが、これが奏功した。

 

階段は走らない

稲枝敬太は、SNSで西武大津店の閉店を知った。同級生で弁護士になった吉嶺マサルを誘って西武大津店に行くと、小学校時代の複数の同級生に出会う。敬太は小6の冬休みに急に転校したタクローを探し出すためWebサイトを制作。タクロー宛のメッセージを遺して閉店当日、敬太とマサルが屋上に登ると、そこにはタクローがいた。

 

線がつながる

大貫かえでは県内の進学校膳所高校で、中学の同級生だった成瀬と同じクラスとなった。坊主頭になっていた成瀬には関わり合いたくなかったが成瀬はそんなことに頓着しない。かるた部に入った成瀬はどんどん腕をあげた。大貫は東大目指して男の須田と友達になって一緒に勉強に励んだ。東大のオープンキャンパスで大貫は成瀬と出会い、成瀬は帰る前に池袋に大貫を連れて西武池袋本店を訪れた。成瀬は大津にデパートを建てる夢を語った。

 

レッツゴーミシガン

全国高校かるた大会に参加した広島県代表の西浦航一郎は、高2の成瀬の誰にも似ていないところに好感を持ち、幼馴染の中橋結希人に協力してもらって、成瀬と滋賀琵琶湖での初デートに成功し、観光船ミシガンに乗った。別れ際、Line交換しようとした西浦だったが、成瀬はスマホを持っておらず、家の固定電話を教えられた。

 

ときめき江州音頭

別々の高校に進学した成瀬と島崎だったが、地元の「ときめき夏祭り」ではゼゼカラとして毎年総合司会を務めていた。島崎が父の転勤のため東京に転居すると聞かされると、成瀬は集中力がなくなり、勉強が手につかなくなった。成瀬らしからぬ事態だ。夏祭りではゼゼカラで漫才を行い、無事終えると成瀬はゼゼカラは解散すると言う。島崎は東京に行くと言ったが、夏祭りには毎年戻ってくるつもりだと言い、成瀬は驚き、あたふたして解散しないと言い出す。成瀬は島崎と江州音頭を全力で踊っていた。

 

第20回「女による女のためのR-18文学賞」大賞/読者賞/友近

第11回「静岡書店大賞」小説部門大賞

ダ・ヴィンチ「BOOK OF THE YEAR 2023』小説部門第1位

読書メーター OF THE YEAR 2023-2024』第1位

京都府私立学校図書館協議会「中高生におすすめする司書もイチオシ本 2023年版」第1位

第17回「神奈川学校図書館員大賞」(KO本大賞)」大賞

「埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本2023」第1位

第1回「高校図書館職員が選ぶ高校生に読んでほしい本」第1位

「岐阜の学校図書館員が選ぶイチオシ本(仮称)」第1位

 

「たくさん種をまいて、ひとつでも花が咲けばいい。花が咲かなかったとしても、挑戦した経験はすべて肥やしになる」(187頁)という成瀬の考え方と行動力に共感する読者はきっと多いはずだ。