阿寒に果つ《下》 渡辺淳一

1997年10月20日発行

 

第3章 ある若き記者の章

当時、純子の姉蘭子はこの記者の恋人だった。記者は独身だった。姉が来た時、カーネーションが部屋の外に置かれていたのが純子の仕業だと分かった時、高1の純子と関係を結んだ。純子は抵抗しなかった。蘭子が東京へ去ると、純子との関係も終わった。理由は姉がいなくなったからだという。ある日、赤いカーネーションが記者の部屋の窓に置いてあった。

 

第4章 ある医師の章

純子が高2で2度目の自殺を図った時の主治医が純子がその後に書いた手紙を見せてくれた。絵を描けないことで悩んでいたことは分かったが、自殺の理由は分からなかった。主治医は純子に求められて接吻したことがあった。手紙はその頃のものだった。純子が求めていた愛というのは別の愛の形を持っていたのではないかと推測していた。結核でもなかった。釧路に行くと言って会ったのが最後だった。

 

第5章 あるカメラマンの章

純子の最後は恋人殿村知之だった。知之の弟康之は純子の高校に転入し、同人誌を純子らと一緒に作っていた。同人誌の仲間たちが集まっているところに知之が加わり、純子の読書の指南役となると、純子と関係を持った。知之は釧路に行くことになった。知之は医師免許なく医療行為をしたことで逮捕された。拘留中の知之に純子は会いに来た。この後、阿寒に行くという。それが最後だった。

 

第6章 蘭子の章

姉蘭子は、14歳で安斎教師を好きになった妹純子が彼に振り向いてもらおうとして自殺未遂をした純子を不憫に思った。純子は1年上の女に負けた悔しさから結核になることを思いつき半月学校を休んだ。純子は絵の才能を開花させて北海道画壇のスターになった。蘭子は小説家を目指していたが、飛躍を期していた。蘭子は純子と抱き合って寝ていた。蘭子が付き合っていた新聞記者と純子が寝たのを知り、蘭子は純子を打ち据えた。純子は安斎の替わりに男達に復讐していると口にしていた。絵が描けなくなると純子は2度目の自殺未遂をした。蘭子の発見が遅れていれば死んでいたかもしれなかった。蘭子は東京に出た。その後、純子は失踪した。

 

終章 

六人はそれぞれ違った視点から純子を見ていたが、全貌は知り得なかった。純子は誰も愛しておらず、愛していたのは純子だったのかもしれない。20年経って、純子は誰のものでもないということだけは間違いない。