めぐり遭ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲隠れにし 夜半の月かな 紫式部
あらざらむ この世のほかの 思ひ出に いまひとたびの 遭ふこともがな 和泉式部
天つ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ をとめの姿 しばしとどめむ 僧正遍昭
心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花 大河内躬恒
さびしさに 宿をたち出でて ながむれば いづくも同じ 秋の夕暮れ 良暹法師
長らへば まだこのごろや しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき 藤原清輔朝臣
田子の浦ゆ うち出でてみれば 真白にぞ 不尽の高嶺に 雪は降りける
世の中は 常にもがもな 渚漕ぐ あまの小舟の 綱手かなしも 鎌倉右大臣