新編 タゴール詩集 山室静編

昭和41年10月5日初版発行

 

〈白鳥〉から

 わたしはこの世界を愛する

  

  私はこの世界を愛する

  そして世界は蔦かずらのようにその一本一本の繊維でわたしの存在にまつわっている。

  月光と闇とは空で入りまじり

  わたしの意識はその中に漂い、その中にとけこんでいる

  ついにはわたしの生命と宇宙とが

  一つになるまでに!

 

  にもかかわらず私が死なねばならぬのはささやかな真実ではないのか?

  わたしの言葉はある日この空間に流れ出ることを止めるだろう

  わたしの眼は決してもはや光に向って聞かれることなく

  わたしの耳は夜の神秘なメッセージを聞かぬだろう

 

  そしてわたしの心は

  昇る太陽のはげしい訴えに向って駆けつけることはないだろう!

  最後の言葉をもって

  わたしは別れをつげなくてはならないのだ。

 

  このように生きる欲求は大きな真実であり

  絶対の告別は他の偉大な真実である。

  それにしてもこの二つの間には調和が産まれねばならぬのだ。

  でなければ創造は

  かくも永らくほほえみながら

  詐欺不正の巨大さを支えることはできなかったであろう

  でなければ、光はすでに闇にのみこまれていたであろう。虫に食いつくされる色のように!

 

〈捉えがたきもの〉から

 自由

  恐怖からの自由が、私の御身に求める自由である、母国よ!-御身みずから

   の歪める夢が形どった、怖れ、夢魔を振りすてよ。

  御身の頭を垂れさせ、御身の背骨を砕き、未来の招きに御身の眼を閉じさせる

   歳月の重荷から自由になれ。

  御身を夜の静寂に縛りつけ、大胆な真理の道をささやく星を信じないようにす

   るまどろみの枷から自由になれ。

  運命の無秩序から自由になれ、かれの帆は容易に盲目不定な風に屈して、いつ

   も死のごとく酷薄冷淡な手に舵をゆだねる。

  御身はあやつり人間の世界に住む恥辱から自由になれ、そこでは動作は無智の

   手にあやつられ、心なき習慣によって繰返される。人は生の瞬時の道化芝居

   のうちに動かされるべく、辛抱づよい従順さで待っているばかりなのだ。

 

〈黄金の舟〉から

 お話をして!

  ・・

  むかしむしかし、そのいそがしい工房において、創造主は元素からものを創り

はじめた。宇宙はそのころ蒸気の塊まりだった。岩石や金属が一層一層とつみ

重ねられた。もしも君がそのころの創造者を眺めたなら、君は彼の中に子供っ

ぽい気持の痕跡すらも見出さなかったろう。彼がそのころやったのはいわゆる

「本質的」なことだった。

 それから生命の端緒が来た。草が生え、樹が芽ふき、鳥や獣や魚がやって来

た。ある者たちは地上を走りまわってその種属を殖やし、他の者たちは水面下

にかくれた。

 歳月がすぎた。遂にある日、創造主は人間をつくった。その時まで、彼は一

部は科学者であり一部は建築家であった。今や彼は文学者となった。

 彼は人間の魂をフィクションを通じて展開させはじめた。動物たちは、食い、

眠り、彼らの子孫を育てた。しかし人間の生命は物語の材料を通して進んだ

―情熱と情熱の、個人と社会の、精神と肉体の、願望と否定との衝突によっ

て形造られる渦巻を通して。河が走り流れる水の流れであるように、人間は走

り流れるフィクションの流れである。二人の人間が出あうとき、そこに不可避

に起るのは、「何かニュースはないか?それからどうなるのか?」という質問

だ。返答は地球を覆う一つの網を織りなした。それは生命の物語であり、人間

の真の歴史である。

 歴史と物語は結合してわれらの世界をつくり出す。人間にとって、アショカ

王やアクバル大帝の歴史が唯一の現実ではない。えがたい宝石を探して七つの

大洋を越えた王子の物語も同じだけの真実をもつ。人間にとって、神話の姿は

歴史の姿と同じだけ真実なのだ。要はどちらが一層信頼すべき事実であるかと

いう点にはない、どちらが一層たのしいフィクションであるかということにあ

る。

 人間は芸術の創作物だ。彼の制作にあたっては、力点は機械的ないし倫理的

な面にではなく、創造的の面に置かれてきた。人間のためを思う人々はこの真

実を隠そうとする。しかし真実は燃え上ってその覆いを焼きつくす。とうとう

困惑した好調と人間のためを思う人々は、倫理とフィクションの間に平和条約

を結ばせようとする。しかし、両者が出あってもただお互いに切りあうだけで

あり、がらくたの山がそこに高く積みあがるだけのことである。

 

〈選詩集〉から B

 清澄の人、仏陀

  

  今日の世界は無我夢中の憎悪で荒れくるっています

  争闘は残忍で苦痛は止む時がありません

  道はねじ曲り、貪婪の絆はからみあっています

  おお、無窮の生命をもつおんみよ

  あらゆる生命はおんみの新しい誕生を待ちこがれています

  おんみの永遠の希望の声をあげて彼らを救い

  その尽きざる蜜の宝をもつ愛の蓮を

  おんみの光の中に花咲かして下さい

 

  おお、清澄の人、おお、自由なる人よ

  おんみの測りしれぬ慈悲と善の中に

  この大地の胸から出てくるすべての暗いしみを拭い去って下さい

 

  おんみ、不死の贈物の与え手よ

  われらに断念の力を与えて

  われらの誇りをわれらから取去って下さい

  新しい知恵の曙の荘厳の中に

  盲者をしてその視力をえさせ

  死んだ魂に生命を甦らせて下さい

 

  おお、清澄の人、おお、自由なる人よ

  おんみの測りしれぬ慈悲と善の中に

  この大地の胸から出てくるすべての暗いしみを拭い去って下さい

 

  人間の胸は不安の熱病で

  自我追求の毒で

  限りを知らない渇きで苦悩しています

  いたるところの国々はその額に

  憎しみの赤い血の刻印をぎらつかしています

  おんみの右手でそれに触れて

  彼らの心を一つにし

  彼らの生命に調和をもたらし

  美のリズムを与えて下さい

 

  おお、清澄の人、おお、自由なる人よ

  おんみの測りしれぬ慈悲と善の中に

  この大地の胸から出てくるすべての暗いしみを拭い去って下さい

 

困惑している人類の歴史をつきぬけて

 

 困惑している人類の歴史をつきぬけて

 破壊の盲目な憤怒が突進してくる

 文明の高塔は粉々になって砕け落ち

 倫理的ニヒリズムの混沌の中で

 何代もの犠牲者によって英雄的に獲得された人類の至宝が

 強盗どもの足に踏みにじられる

 

 若い国民よ、来って

 自由のための戦いを宣し

 不屈の信念の旗をかかげよ

 君の生命もて

 憎悪にひき裂かれた大地の深層に橋をかけて

 進み出でよ

 

 君の頭で侮辱の重荷を選ぶべく屈服するな

 恐怖に駆られて。

 そして君の辱しめられた人間性のために隠れ家をたてるべく

 虚偽と狡智をもって塹壕を掘るな

 君自身を庇うために

 弱き者を読者の犠牲にするな

  • 第二次大戦を前にカナダ国民に訴えて、1938年5月、オッタワ放送局から放送されたもの

ウクライナ侵略戦争―世界秩序の危機 世界no.957臨時増刊号

2022年4月14日第1刷発行

 

戦争を終わらせるためにー人道上の危機と国際関係の危機 平和構想研究会

昨今の核共有や非核三原則見直しの主張に対し、これらは核の脅威が高まっているから我が方も核の軍事力を強めようという程度の感覚で語っているにすぎず、その政治的悪影響は深刻であると強く警告している。キューバ危機を経験した中南米は世界初の比較兵器地帯を通リ、モンゴルは非核兵器地帯の地位を確立。核兵器禁止条約への各国の批准を促進することが今まさに重要と指摘。軍事同盟によって世界を分割するのではなく多元的な予防外交を展開し国連が掲げる戦争の克服という目標に世界を近づける、それこそが平和憲法を持つ日本が今日果たすべき役割であると結論づけている。

 

資料と解説 異なる視点―第三世界ウクライナ危機 栗田禎子

A 国連安保理でのケニア国連大使の発言(先進諸国によって分割・植民地化されたアフリカの経験との共通性を指摘しつつ、ロシアの行動が国際法違反であると述べた点が重要)、E パグウォッシュ会議の声明(現実的解決の手がかりとして「ミンスク合意」等の過去の交渉の実績・到達点を改めて参考にすべきだという認識は意味を持つ)はじめ、Bインド共産党清明、Cキューバ代表の国連総会緊急特別会合における演説、D南アフリカ代表の国連総会緊急特別会合における演説は、いずれも「棄権」という行動を取ったものの、背景が異なると分析。B・Cは、NATOによるロシア敵視政策がロシアに脅威を与え今回の事態の原因になったことを批判し、Dは国際法国連憲章重視の姿勢は一貫させつつも他の長期紛争に対しても同等の関心を注ぐことを求めている。

 

それ以外にも、多くの論考が寄せられており、大変勉強になる。

フィンランド  幸せのメソッド  堀内都喜子

2022 年 5 月 22 日第 1 刷発行


 表紙に「幸福度 5 年連続世界一(2018~2022)」「小学校から大学院博士課程まで学費無料!」「ジェンダーギャップ指数第 2 位(2021)」「ワークライフバランス世界一(2019、2021ヘルシンキに対して)」「『移民が感じる幸福度』第1位(2018 国連調査)」、「国民みんなが幸せになれる、驚きの『仕組み』とは?」「推薦!山口周氏、小島慶子氏」とあり、裏表紙には「『アメリカン・ドリーム』よりもすごい『フィンランド・ドリーム』を支える仕組み」
「・優秀な若者を積極的に抜擢し、ベテランは陰から支える文化
 ・男女平等への取り組みを企業や学校に求める『平等法』
 ・児童手当、親休暇、職場復帰を保証する『在宅保育の休業制度』…子育て・共働き 家族を助ける多種多様な手当と休暇
 ・小学校から学費無料、さらに大学以降は生活手当と住居手当も支給
 ・『学力向上』なんて時代遅れ⁉フィンランドの学校の最新事情
 ・誰でも無料で利用できる出産・子育ての専門医療施設『ネウボラ
 ・新生児誕生時に贈られる、赤ちゃん用品が詰まった『育児パッケージ』
 ・起業ブームの背景にある大学教育とスタートアップ手当などの公的支援
 ・国民の声を政府に届けて同性婚の合法化に繋がった『国民発案性悪』」とある。
 表紙裏にも表紙と同様に多方面で高い評価を受けていることを再掲した上で「その背景には、『人こそが最大の資源で宝』という哲学がある。立場を問わず全ての国民が平等に、そして幸福に暮らすことを可能にする、驚くべき仕組みの全貌とは?そして、日本はそこから何を学べるのだろうか。最新の情報もふんだんに盛り込んだ、いま必読の一冊」とある。
 まえがきで、2019 年 12 月に世界最年少 34 歳で第 46 代フィンランド首相に選出されたサンナ・マリンが登場。幼い頃に父のアルコール問題で両親が離婚し、母は同姓パートナーと一緒になり、マリンは家族の中で初めて高校卒業資格保有者となった。高校卒業後は店のレジ係として働き、失業手当を受けて生活したり、そんな中で大学に進学し、学生ローンは借りずにアルバイトをして生活する中で、政治に関心を持ち始めて、10 年以上かけて卒業。国会議員になった後に修士号を取得。国会議員になったとに娘が産まれ産休・育休を取得し、首相になった後に正式に結婚。2020 年の新年の挨拶で「社会の強さは、最も豊かな人たちが持つ富の多さではなく、最も脆弱な立場の人たちの幸福によって測られます。誰もが快適で、尊厳のある人生を送る機械があるかどうかを問わなければなりません」と締めくくった。
 これだけで本書の掴みは十分だろう。

 しかし、驚くことなかれ。なんと連立政権を率いる5党のリーダーたちは、全員女性で、しまも4人が30代前半。以前から女性の社会進出が進んでいたかと言えば、必ずしもそうではなくここ10数年で女性がトップに就くことが増えたようだ。
 フィンランド版の経済同友会にあたる「ビジネス・政策フォーラム」(EVA)が2007年に発表したレポートによると、上場企業では女性経営者の企業の方が、男性経営者の場合と比べて平均で利益率が10%高いという。
 現在フィンランドの男性が子どもと過ごす時間は1日あたり平均で4時間 14 分。2017 年に OECD が発表した、親が子どもの育児に積極的に関わる時間についての調査では、フィンランドは父親の方が母親よりも1日あたり平均で8分長かった。父親の方が長い国はフィンランドのみだ。
 「ネウボラ(neuvola)」は、フィンランド語で「アドバイス(neuvo)の場(la)」という意味。出産、子育て、心理カウンセリング、避妊や不妊に関する相談、離婚や非行といった家族の問題など、様々な相談内容に応じて複数のネウボラが存在し、フィンランドでは、国立保健福祉研究所(THL)の調査によれば 99.7%の人たちがネウボラの健診を受けている。
 また出産の際にフィンランド社会保険庁(KELA)は育児パッケージを支給している。ベビーケアアイテムや服、親のためのアイテムなど 50 点に及ぶ。1 歳になるまでの必要なありとあらゆるアイテムが一通り揃ったスグレモノ。現金で受けることもできるが、95%はこちらを選択する。
 フィンランドのクロサーリ小学校では教師と子どもが一緒に成績評価をするので、一方的な評価や相対的評価でない分、子どもの満足度も上がり、主体的かつ積極的に学びに取り組むことになるという。また学校での部活動はないものの、ワーク&バランスが整っているので1日にスポーツに楽しむ時間は OECD の統計によるとフィンランドは世界トップクラス。企業立国としても成功していてスタートアップに集まる投資額はヨーロッパ最大で欧州平均の2倍、海外からのスタートアップへの投資額は2010年以降で10倍に増えている。フィンランドといえばノキアが有名だが、携帯事業を切り離した際にその直前にリストラ支援プログラムブリッジを始めて企業支援したが、その利用者の満足度は85%と非常に高い。高校生への調査で「将来のキャリア選択肢として企業を考えているか」には2008年には2%だったのが2018年で47%に跳ね上がっている。
 フィンランドの大学生は授業料が無料であることに加え、国から 54~56 カ月間、生活手当と住居手当を合わせてひと月当たり約 5 万円が援助される。
 子ども向けの記者会見も工夫されていて、首相と大臣が公共放送と協力して子ども向けの記者会見を開いて不安を抱える子どもに向けて分かり易い言葉を選んだコロナ禍でのメッセージを伝えることにも一定の成功を収めている。2021 年 1 月の調査で政府のコロナ対策は 75%が受け入れる若しくは高く評価するとなっており、デンマークに次いで高く支持されている。2020 年末の SDGsの最も高い達成度はフィンランド。欧州グリーン首都賞を受賞したラハティは生活の質を落とさずに楽しみながらサスティナブルの大都市を作ることを目指し、2025 年までにカーボンニュートラルに、2050 年までに廃棄物ゼロの循環型経済都市になることを目標とする。

 2012 年から施行された国民のイニシアティブ制度もユニーク。5 万人以上の署名を集めれば正式に政府に提案でき、それにより同性婚の合法化法案が成立し 2017 年に施行された。
 勿論課題もあるが、学ぶべきことは山のように沢山あると思う。頭カチコチの老人社会になってしまった日本も沈没する前にフィンランドに多くを見習いたいと痛切に思う。

 

知里幸恵物語 アイヌの「物語」を命がけで伝えた人 金治直美

2016年6月7日第1版第1刷発行

 

アイヌには村長というまとめ役はいるが、和人社会のような支配者階級はない。アイヌの村落は平和で平等な社会。そんなアイヌが和人と戦わざるを得なかったのは過去に3回。1457年コシャマインの戦い、1669年シャクシャインの戦い、1789年クナシリ・メナシの戦い。和人がいずれも勝利する。明治になると、アイヌへの迫害は一層ひどくなる。

アイヌ文化振興法が制定されたのは1997年。それと同時に旧土人保護法が廃止。この法律が制定されたのが1899年なので100年近く法的にも差別し続けていた。アイヌ語を研究していた金田一京助(36歳)が1882年に知里と出会い、以降、アイヌ語をローマ字で残し、日本語に訳した書籍を知里と一緒に制作する。アイヌ語は文字を持たず口語伝承の文化。『炉辺叢書』(柳田國男)のシリーズの一つ『アイヌ神謡集』『アイヌ俚談集』として出版にこぎつけるための努力が続けられる。知里は婚約者・曾太郎を旭川に残し、上京して、『神謡集』完成のために京助先生の書生として住み込み、全力を傾けるが、生来の心臓の病(僧帽弁狭窄症)のため、19歳で『神謡集』出版直前に亡くなる。金田一京助は、アイヌ語の研究に没頭し、『アイヌ叙事詩ユーカラの研究』、全9巻の『アイヌ叙事詩ユーカラ集』を発刊。知里の弟の高央は『アイヌ語彙辞典』を編纂、下の弟の真志保は金田一京助の援助により東京帝国大学で学び、後に北大の言語学教授としてアイヌ語の辞典やユカㇻの筆録等の成果を収める

日本がアイヌを差別し「土人」と公式に呼び、アイヌ語を奪おうとした歴史があるという事実すら知らなかった。無知は恐ろしい。深く反省させられた一書でした。

勝海舟 修養訓 石川真理子

平成28年3月25日第1刷発行

 

表紙に「幕末の英雄 勝海舟が説いた人間を磨く50訓」、「人はたれでも、自省自修の工夫が必要だ」、「☆自省自修の工夫をせよ」「☆無心になれ」「☆言わせておけ」「☆忘れてしまえ」「☆究極の健康法」「☆礼をわきまえよ」「☆名誉を先に求めるな」「☆現世での評価にこだわるな」「☆公平な考えで人を見抜け」、表紙裏には「人間に必要なのは平生の工夫で、精神の修養ということが何より大切だ。」とある。

5%社員の本とは正反対のようなことも書いてあるが、大人物というのは勝のような肝玉が座っていないといけないのだろう。目端が利くだけでは大人物にはなれない。そういう意味で両面必要なのかもしれない。また、まずは目指すは5%社員で、ゆくゆくは勝のような人物を目指すべきなのかもしれない。

第1章 根を養う

  1 自省自修の工夫をせよ

  2 無心になれ

  3 根気を強からしめよ

  4 身体を鍛えよ

  5 土台をつくれ

  6 心を研ぎ澄ませ

  7 古来の実例と照らす

  8 人の筋道を違えるな

  9 家族を顧みよ

  10 『小学』に学べ

第2章 己を鍛錬せよ

  11 活学問が人物をつくる

  12 不足不平も必要

  13 時勢が人をつくる

  14 頭脳で受けるな

  15 言わせておけ

  16 風霜辛酸に耐えてこそ

  17 極めつけは無学の学問

  18 批評家になるな

  19 機を待て

  20 根気がものを言う

第3章 とらわれない

  21 忘れてしまえ

  22 他を排斥するな

  23 方針に執着するな

  24 心配は何の足しにもならない

  25 人の相場も上下する

  26 逆風を楽しめ

  27 観察眼を持て

  28 誰にも才はある

  29 話は謙虚に聴け

  30 究極の健康法

第4章 闘わず、負けず

  31 呼吸を習得せよ

  32 決然と事に当たれ

  33 仕事をあせるな

  34 結果に気を取られるな

  35 難治に際して臆病になるな

  36 勝とうとするな

  37 冷静に処する

  38 捨ててかかる

  39 思案は行動を鈍らせる

  40 柔よく剛を制す

第5章 誠さえあれば

  41 うぬぼれは必死で押さえつけよ

  42 何事も知行合一

  43 ただ行う

  44 余裕を持て

  45 礼をわきまえよ

  46 名誉を先に求めるな(誠さえあれば、鬼神は感動するよ)

  47 現世での評価にこだわるな

  48 公平な考えで人を見抜け

  49 後進を育てよ

  50 誠を持ちて今を生きよ

 

 勝の師匠は佐久間象山、従者と同じ粗末な小倉袴で佐久間を訪問すると、佐久間は戒める。が、勝は彼等を兄弟として待遇しており従者ではない、先生も元は同じ書生であった、他日あなたのように出世するかもしれないと反論した。この言葉に豪胆であり、かつ慈愛がこもり、細やかで情に厚い勝の人間性が溢れている。かくありたいものだ。

新ヘッセ詩集 高橋健二訳

昭和38年5月31日初版発行 平成1年3月10日28刷発行

 

第1部 生命の木から -妻ニノンのためにー

 霧の中

  不思議だ、霧の中を歩くのは!

  どの茂みも石も孤独だ。

  どの木にも他の木は見えない。

  みんなひとりぼっちだ。

 

  私の生活がまだ明るかったころ、

  私にとって世界は友だちにあふれていた。

  いま、霧がおりると、

  だれももう見えない。

 

  ほんとうに、自分をすべてのものから

  逆らいようもなく、そっとへだてる

  暗さを知らないものは、

  賢くはないのだ。

 

  不思議だ、霧の中を歩くのは!

  人生とは孤独であることだ。

  だれも他の人をしらない。

  みんなひとりぼっちだ。

 

ことわざ

 だからお前はすべてのものの

  兄弟姉妹にならなければならない、

  ものとお前がすっかり溶け合って、

  自分のものと、ひとのものとを分かたなくなるように、

  星ひとつ、木の葉ひとつが落ちてもー

  お前が一しょに滅びるようでなければならない!

  そうなったら、お前もすべてのものと一しょに、

  あらゆる時によみがえるだろう。  

 

 独り 

 地上には

 大小の道がたくさん通じている。

 しかし、みな

 目ざすところは同じだ。

 

 馬で行くことも、車で行くこともできる。

 だが、最後の一歩は

 自分ひとりで歩かなければならない。

 

 だからどんなつらいことでも

 ひとりでするということにまさる

 知恵もなければ

 能力もない。

 

 平和―1914年10月―

  ・・

  それがいつ来るか、ひとりとして知らない。

  だれもがその日をあふれる願いをもって待ちこがれている。

 

  いつの日か、歓喜して迎えよう、

  最初の平和の夜を、

  やさしい星を、お前がいよいよ

  最後の戦闘の砲煙の上に現れたら。

 

  夜ごと夜ごと私の夢は

  お前のほうを見あげる。

  焦燥に駆られた希望は、はやくも

  胸おどらえながら、木から黄金の実を摘む。

 

  いつの日か歓喜して迎えよう。

  血と苦しみの中から

  お前がこの世の空に現われ、

  別な未来の朝焼けとなったら!

 

 困難な時期にある友だちたちに

  この暗い時期にも、

  いとしい友よ、私のことばを容れよ。

  人生を明るいと思う時も、暗いと思う時も、

  私は決して人生をののしるまい。

 

  日の輝きと暴風雨とは

  同じ空の違った表情に過ぎない。

  運命は、甘いものにせよ、にがいものにせよ、

  好ましい糧として役立てよう。

 

  魂は、曲がりくねった小道を行く。

  魂のことばを読むことを学びたまえ!

  今日、魂にとって苦悩であったものを、

  明日はもう魂は恵みとしてたたえる。

 

  未熟なものだけが死ぬ。

  他のものには神性がが教えようとする。

  低いものからも、高いものからも、

  魂のこもった心を養うために。

 

  あの最後の段階に達して初めて、

  私たちは自己に安らいを与えることができる。

  その境に到って、父に呼ばれつつ

  早くも天を見ることができる。

 

第2部 花咲く枝から -姉アデーレにささげるー

(略)

 

ことば

 世界は、ことば、啓二、精神を求めて戦い、

 人間の口びるから永遠の経験を明るく告げる。

 生あるものはみなことばにあこがれる。

 私たちの穏微な努力は

 ことばと数、色と線と音の中にあらわれる。

 そして、意味のいよいよ高い玉座を築く。

 

 花の赤い色と青い色の中へ、

 詩人のことばの中へと、

 絶えず始まってけっして終わることのない

 創造の営みが、内部へ向かう。

 ことばと音の結びつくところ、

 歌のひびくところ、芸術の花ひらくところでは、

 必ず世界の意味、

 全存在の意味が新たにかたちづくられる。

 どの歌も、どの本も、

 どの絵も、みな示現であり、

 命の統一を実現しようとする

 新しい、千番めの試みである。

 この統一をきわめるように

 詩と音楽は君たちを誘う。

 万象の多様さを理解するには、

 ただ一ど鏡に照らしてみることで足りる。

 私たちの出くわす混乱したものは、

 詩の中で明らかに単純になる。

 花は笑い、雲は雨を降らす。

 世界は意味を持ち、無言なものが語る。

 

(以上が、私が気に入った詩の一節)

ヘッセは4歳のころから歌のようなものを作り、85歳で死ぬ前日まで詩稿を練っていたらしい。あとがきによると、ヘッセは、何よりも、ことばの芸術家であった、とあるが、本当にその通りだ。

AI分析でわかった トップ5% 社員の習慣 越川慎司

2020年9月25日第1刷 2020年11月4日第3刷

 

表帯封に「元マイクロソフト役員であり、16万人の働き方改革を支援した著者が語り尽くす ビジネスパーソン1万8000人を定点カメラ・ICレコーダー・GPSで調査、AI分析した働き方の結論」、裏帯封に「これがトップ5%社員の思考と行動だ!

 □週に1回、15分の「内省タイム」を持つ

 □ランチで「ヨコ」の人脈を構築する

 □会議での発言回数は多いが、発言時間は短い

 □完成度が20%で意見を求める

 □狙って「小さな失敗」をする

 □「金曜日にやらない仕事」を決める

 □「たし算のスキルアップ」ではなく、「かけ算のスキルアップ」を狙う

 □社外に「心のつながり」のある人脈を築く」とある。

帯封・中に「トップ5%社員の5原則」「1「目的」のことだけを考える 2「弱み」を見せる 3「挑戦」を「実験」と捉える 4「意識変革」はしない 5常に「ギャップ」から考える」とある。

 

ほぼ、これでこの本の要旨は伝えられていると思う。

少し解説が必要なのは、「意識改革」はしない、かもしれない。要は行動を起こすことに価値があると考えて行動を変えることで意識が変わる、行動変容が習慣にかわり意識せず行動を変えていく、ということらしい。「~すべき」と正論をかざしたところで抵抗勢力は動かないことを知っておいた方がよいという。

帯封になく本文にあって貴重な情報としては「トップ5%社員はアウトプットする習慣を持っている」という項目だろう。思いついたアイデアを次々と口に出すから一般社員と比べると2倍以上のアイデアを出しているらしい。また「笑顔の連鎖を作る」という項目もいい。

強いチームを作るトップ5%社員の発言として、「今ちょっといい?」「そうかもしれない、しかし私はこう思う」「いいね」「そうだね」「さすがだね」「賛成、さらにこれやろう」「そうだね、でもさらにこうすれば良いね」「そうしたら、〇〇しよう」を挙げている。最後の項目だけ少し説明が必要かもしれない。要は「だけど」「でも」「ですから」「どうしても」というダ行の言葉を使わず、代わりにサ行の「そうですか」「そうしたら」「しかし」「失礼しました」「承知しました」という言葉の方が相手の感情を逆なでしないので受け止め方もソフトになるらしい。「〇〇だと思いますが・・」は「〇〇かと思われます、しかし・・」のように云い換えてみてはと提案している。

レスポンスが早くメール返信は15分以内、処理速度は3倍速いらしい。

プレマックの原理(習慣化された行動の前に、新たな行動をセットするとそれを実行し易くなるという法則)を活用すると、より多くの事柄が習慣化される、というのは最近とみに実感する。また情報は集めるのではなく集まる仕組みを作っているという指摘は鋭い。例として・Googleアラートで英語も設定、・Newpicksを読む、・RSSをビジネスチャットで受ける、・専門書だけではなく洋書も読む、・シンクタンクのレポートを提起チェックを上げる。これらはまだ実践できていなかったので、極めて有益な情報だった。

ショートカットトップ10

①テキストボックスを挿入する→ALT+N,X ②図形を挿入する→ALT+N,S,H ③直前の操作を元に戻す→Ctrl+Z ④直前の操作を繰り返す→Ctrl+Y ⑤新しいスライドを追加→Ctrl+M ⑥画像を挿入する→ALT+N,P ⑦配置したオブジェクトのグループ化オブジェクトを選択して→Ctrl+G ⑧選択したテキストのフォント変更する→ALT+H,F,S ⑨スライド内のテキストボックスやオブジェクトをコピー→Ctrl+D ⑩選択したオブジェクトやテキストをコピー→Ctrl+C

一人ランチをやめて、月1回異なる部門とクロス・ランチを実施すると働き方が年9%上がるらしい。

あとがきに、魅力的な人物の要素は「態度」「気構え」「行動」、とあった。確かにその通りですね。ふむふむ。という感じの本です。