15歳の寺子屋 星の声に、耳をすませて 林完次

2013年9月26日 第1刷発行

 

私は、全くの星座音痴です。星座には全く疎いですし、ほとんど関心がありませんでした。この本に星座が出てくるたびに、ネットで一つ一つ叩かないと、何のこと?ってなってしまうのですが、でも、ネットで調べながら本を読み進めてみると、違った世界が発見できることにちょっとした面白みを感じました。以下、この本の、私なりのエッセンスを紹介したいと思います。

 

著者は冒頭で、冬の六角形を紹介するところから始めています。冬空には一等星が7つもあって、赤色の一等星を真ん中に六角形を描いている。おおいぬ座シリウスこいぬ座プロキオン、双子座のポルックスぎょしゃ座のカペラ、おうし座のアルデバラン、オリオン座のリゲル。これを「冬の六角形」というらしいです。

ネットで調べると「冬のダイヤモンド」とも。そして真ん中にオリオン座のベテルギウスという一等星があって、ちょうど六角形の真ん中で瞬いています。

 

著者の兄は木村伊兵衛の三脚持ちだった人からカメラの手ほどきを受けたらしく、その兄からカメラを借りたのがきっかけで、カメラに夢中に。木村伊兵衛さんも、私は良く知らなかったのでネットで調べると、日本の近代写真史上もっとも重要な写真家だったらしく、秋田美人をはじめ名作を沢山残している方でした。本当に何から何まで知らないことだらけです。

 

日下英明さん、野尻抱影さん。星の魅力を言葉で伝えている先輩として紹介されていました。両名の著作とも、私は恥ずかしながら読んだことがありません。『星座手帳』、『星と伝説』が代表作のようなので、いつか読んでみたいです。

 

夏空に浮かぶこと座の織姫ベガ、わし座の彦星アルタイル。それにはくちょう座のデネブを結ぶと、夏の大三角が作られる。星座の数は全部で八十八。これらも全部初めて知りました。もしかしたらどっかで聞いたかもしれないですが、記憶に全く定着していません。

 

北極星を挟んでカシオペア座(日本では山形星、いかり星)。国によって星座の名前が違うっていうのも面白い発見です。ちなみに、反対には北斗七星(これはさすがに知っていました)が。

 

すばるって、カラオケでしか知らなかったけど、おうし座のプレアデス星団を日本名で「すばる」(昴)と呼んでいるんですね。知らなかった。古事記万葉集、江戸時代後期の狩谷液斎の書物にも出てくるらしい。枕草子にも「星はすばる。ひこぼし。ゆふづつ。よばひ星。すこしをかし。尾だになからましかば、まいて」と。

 

 肉眼で見える星の数は約8600個、実際には6000個くらい。地平線の下の星は見えないので一度に見える星の数は約3000個。五島プラネタリウム(渋谷の東急文化会館)閉館後のドームを使ってメガスターという新型プラネタリウムを開発した大平貴之さん。以前、著者に電話を掛けてきた高校生に星の写真の取り方を教えてあげたら翌日も電話がかかって結構な時間をかけて教えてあげた。数年後、大平さんと対談した時に、あの時の高校生は太平さんだったことが分かる。著者が草下英明さんの『星座手帳』を読んで星への憧れを言葉にしてもらったのと同じように、星を追う少年たちの物語はこうやって受け継がれていくのかもしれない、という話は中々感動的でした。

 

三大流星群。1月のしぶんぎ座流星群、8月のペルセウス座流星群、12月のふたご座流星群。夏と冬は1時間当たり60個ほど見えるので1分間に1個流星が飛ぶ、らしいです。

2001年のしし座流星群はピーク時には1時間に5000個も流星が飛んでいたとのこと。しし座流星群は、過去には1799年、ドイツの植物学者フンボルトは南米旅行中にベネズエラのクマーナで1時間あたり百万個の流星を見たとも。ロマン・ロランは『獅子座の流星群』という戯曲で、フランス革命の終わりと星の運命が一つになって響き合う作品を残し、ゴッホは『ローヌ河畔の星空』で北斗七星(本当は南斗六星しか見えなかったらしい)やそれ以外の星を描いていたとのこと。

かに星雲超新星が爆発した残骸で1054年に突然現れ、中国の『宋史』、日本では藤原定家の『明月記』に出てくるようです。

 

星座、って、なぜか殆ど今まで感心がなかったのですが、この本を読んで、自分で感心分野を限定してしまうのは、とてもモッタイナイことだと感じました。なぜなら、いつも、今日も、明日も、明後日も、見ようと思えばいつでも見れるのに、それを見過ごしていたからです。家路に着く途中で空を見上げれば、そこに、古の人たちが夢を馳せた世界が共有できる。そんな宝物が目の前にあるのにこれまで気づかなかったなんて、なんてモッタイナイんだろう、そう思いました。実は一昨日の夜は、満月だったんですよね。満月を、生きているうちにどれくらい何回見れるか、楽しめるか。それも一つの人生の楽しみ方のような気もします。

 

それにしても今日のスケートボードの堀米優斗君の金メダル。水谷伊藤ペアの絶対に諦めない、最後まで攻めに接する姿勢、大橋選手の金メダル。感動の嵐が吹き荒れています。内村選手も瀬戸選手も残念だったと思いますが、世代交代、選手交代。そんな時代が既に到来しているのですね。