西遊記 呉承恩 舟崎克彦訳

1990年9月25日第1刷 1995年7月10日第4刷

 

呉承恩は1500-1582 明代の詩人、作家。

花果山の頂きにある大石から生まれた卵から誕生した石ザル。仙人に孫悟空と名付けられる。仙人が弟子に与えた呼び名のうち、石ザルは10番目の「悟」にあたるので、「悟空」となったと解説されていたが、ここは意味が理解できず。仙人から授けられた秘法「筋斗雲」はひと息に6万キロも飛ぶことができる。悟空は龍王から如意棒を召し出せた。

唐王朝時代となり、天竺(インド)に三蔵法師が出向く時に悟空は護衛役につく。三蔵法師玄奘という実在の御坊さんがモデル。三蔵とは経典を経蔵・律蔵・論蔵に分類したもので、三蔵のお経を取りに行くことから太宗皇帝が玄奘三蔵法師と名乗らせた。龍が馬の姿にかわり、猪八戒沙悟浄が登場し、痛快な物語がどんどん進行していく。

注記によると、玄奘はインドに着くとナーランダー僧院に入り5年間仏教を学び657部の経典を持ち帰る(西遊記上は35部)。悟空は再び天竺に戻り闘戦勝仏という仏の位を、八戒は浄壇使者、悟浄は金身羅漢として元の姿に戻り、白馬の龍馬も八部天龍として龍の姿に戻る。

 

訳者の解説によると、これほど天衣無縫なキャラクターはめずらしく、これほど古くて古さを感じさせない作品も少ない、西洋の名作が多い中で東洋を舞台にしたことも稀で、時代を超えてこれほど繰り返し読まれる本も滅多にない。この息の長さの由来は、「いい子」ではない暴れっぷりになり、他方で頭にはめられた金の輪の締め付けにおびえながらも正義のために戦う姿を通して、世の中のおきてが込められつつ、SF顔負けのキャラ立ちもあり、しかも実話をもとにして作られたところにあるのではないかと分析する。

 

これで中国四大奇書のうち未読は「金瓶梅」のみとなった(三国志水滸伝西遊記は既読)。来年早々に読んでみたい。