細井平洲の経営学~『嚶鳴館遺草』に学ぶ 童門冬二

2015年10月4日 第1版第1刷

 

 名君の呼び声高い上杉鷹山米沢藩主)が座右のテキストとして活用した細井平洲の『嚶鳴館遺草』は西郷隆盛吉田松陰も感動させた。「修身・斉家・治国・平天下」を奨励する。全六巻「巻之一 野芹 上中下 巻之二 上は民の表、数学、政の大体、農官の心得 巻之三 もりかがみ、対人之問忠、建学大意 巻之四 菅子牧民国字解 巻之五 つらつらぶみ 巻之六 花木の花、本末、対某候問書 附録  與樺世儀手簡」から成る。

 二宮金次郎の「報徳仕法」(分度・勤労・推譲)は「大学」の影響だけでなく、平洲の「遺草」からも影響を受けているのではないかと筆者は考えている。また細井平洲に影響を与えたのは中江藤樹ではないかと考えている。平洲の親友の学者秋山玉山は細川重賢(しげかた)に仕え、藩校時習館を創立する。

 著者は細井平洲を実学者として捉え、江戸アカデミズムの高踏的な場所に身を置かず常に庶民や農民を主体とする生活者の中で生き、底辺で生きる人々に“恕と忍びざるの心”をもって接し、その苦楽を自分のこととして受け止め、民の苦楽をひとごとでなくわがこととした。

 細井平洲の本は私が今まで知らなかっただけで結構色々あるようなので勉強してみたい。