舞姫 森鴎外

昭和43年4月20日発行 昭和43年9月30日2刷

 

19歳で大学を卒業し、公費でドイツに留学する豊太郎。国の為、当初は熱心に学問に励むが、自分の手足が精神的に縛られていることに疑問を抱くようになる。そんなある日美しくも貧しい16歳の踊り子エリスと知り合い、彼女を援助するようになる。が、急接近し恋仲に陥ると、同僚に告げ口をされて免職となる。そんな彼をエリスが今度は助ける。その後、友人相沢謙吉の助力を得て、通信員の仕事を得る。が、エリスはある日舞台で卒倒し、母が娘の悪阻に気づく。天方大臣の伯林(ベルリン)出張の通訳を務め、大臣からも、友人からもエリスの関係を絶つよう説得される。友人は「一種の惰性より生じたる交なり。意を決して絶て」と。エリスの愛と友人の忠告との板挟みになった豊太郎は友人には別れたと告げ、エリスは捨てないでくれと言い、悩んだ豊太郎は彼女の前で失神する。しばらく意識が戻らなかった豊太郎が目を覚ました時、目の前にいたのは発狂したエリスだった。豊太郎が倒れている間、友人が訪ねてきてエリスに、彼は別れてると言っている、仕事を得て帰国することになっていると告げる。豊太郎の裏切りを知ったためにエリスは発狂してしまった。このため、豊太郎は「相沢謙吉が如き良友は世にまた得がたかるべし。されど我脳裡に一点の彼を憎むこころ今日までも残れりけり」とつぶやいて終わる。

森鴎外自身、ドイツ留学中に昵懇となったドイツ女性が遥々ドイツから日本に鴎外を訪ね一家が心配してドイツに帰らせることに成功したという経験があったことが巻末の解説にあった。自身の経験そのものではないにしても、どうやら自身の体験と別のモデルを融合させて作品のようだ。いずれにしても架空の話とは言え、エリスがあまりに可哀想過ぎる。そのせいか今日は寝不足になってしまった。