学校では教えてくれない生活保護 雨宮処凛

2023年1月30日初版発行

 

表紙裏『ちょっとした情報があるかないかで生き死にが分かれてしまうこの国で、誰もが知っておくべきこと、詰め込みました。』

 

・日本の「捕捉率」(生活保護を利用するべき人がどれくらい利用しているかを示す数字)は2~3割と言われているのに対しスウェーデンは82%、フランス91.6%と高い。

・コロナ禍であるにもかかわらず2020年度は前年比2.3%増、2021年度の申請件数は前年比5.1%増。長期失業者が31%増、特別貸付利用者が激増しているのに。反対に自殺者が増えた。2021年は2万1007人(1日57人)。

・日本では利用すべき人が利用できていない。下人の一つは現場の職員のオーバーワークが続いているからだ。1人で80世帯を担当するのが標準だという。地域によっては200世帯を担当するところもある。

・刑務所に1年収容される時のコストは刑務官の人件費を含め1人当たり年間400万程なので生活保護コスパがよい。

生活保護バッシングは、ギリギリで生きている生活保護者に対し、生きていてはいけないというメッセージを与える。自民党生活保護1割カットはギリギリで生きている人達にとって死活問題。裁判で原告が一部勝訴している。

・小久保哲郎弁護士との一問一答は多くの誤解を解く上で有益情報が沢山ある。

 例えば、持ち家や車を持っていても、またペットがいても、条件・状況次第で生活保護が受けられる、多少の収入があっても控除があるので手元にお金を残せることがある、家賃を滞納して退去しなければならないときには転宅費が支給される、ホームレスでも利用できる、韓国では死角地帯の解消を目指した法律がある、名称も生活保護から基礎生活保障に変わった等。

・五石敬地大阪公立大学大学院准教授は、もともと日本を参考にして制度設計した韓国だが、単給化を認めて以来制度利用者が急増した(日本でもまずは家賃補助の形で住宅補助を独立させてはどうか)。政府あげてのキャンぺーンがなされたことも大きい。日本にも韓国のような緊急福祉支援法を作ってほしい、もちろん韓国が薔薇色だというわけではなく高齢世代の貧困率は日本より高く生活補助の額も日本より低い、しかし受給率は日本1.6%に対し3.1%と日本よりも高い、韓国の制度の良い所を参考にしてほしい等と述べる。

・ドイツの生活保護に詳しい法政大学布川日佐史教授は、コロナ禍でドイツの生活保護は進化したといい、預金800万未満なら調査なしで利用できる、日本のように怠け者として見て管理し制裁をし働かせるのではなく、相手を信頼し支援する方向へ制度を転換。連邦憲法裁判所はケースワーカーは利用者に対し上から目線でああしろこうしろと口を出してはいけないという判決を出した、自分の事を自分で決める権利を侵害するから、自分の生き方を自分で決めることを尊重しようという判決。

・移住者と連帯する全国ネットワーク運営委員の稲葉奈々子上智大学教授は、定住者の在留資格を更新しながら永住者を目指している人が生活保護を受けたら在留資格が更新されないと不安になるため生活保護を受けずに我慢している、仮放免の人に対する処遇について国連から何度も勧告を受けている日本政府は問題なしという立場を続けている等と問題提起している。

・一般社団法人つくろい東京ファンド稲葉剛代表理事は、30年近くにわたって約3000人の生活保護申請に同行した、偏見を払拭するためには教育が必要、大阪の西成高校で反貧困学習の取り組むを進めている等という話を紹介している。

 

全く疎い分野だったので、大変勉強になった。