2015 年 12 月 10 日初版発行
アイヌ民族否定問題 ×マーク・ウィンチェスター
「アイヌ民族なんて、いまはもういない」とツイッターに書きこんだ金子快之札幌市議の言動とそれを後押しするネットのヘイトに対し、どうして差別はいけないことだという単純なことが分からないのかと疑問を投げかける香山と、長年アイヌ史を研究し現場に積極的に参加しているマークとの短いながらも、結構有益な情報を盛沢山詰め込んでくれている(ILO(国際労働機関)の民族の基準に照らしアイヌは全て当てはまる、2008 年には国会でアイヌ民族を先住民族とすることを求める決議が採択されるなど)ショート対談。もともと北海道旧土人保護法があり、それが 1997 年に「アイヌ文化振興法」が広布されてようやく旧法が廃止されたというのは知っていたが、それぞれにどういう問題点や背景があったかについて改めて深く学べる機会となった。そして何より安全地帯から批判するのではなく、路上で自らの信念に基づく行動を貫く姿勢に感銘を受けた。
マイノリティと反ヘイト ×青木陽子
カウンター活動の中では、レイシストをくいとめるためにカウンター側の暴言は適量だ
と判断した、全ての暴力をなし崩し的に認めるわけでなくその緊張関係を常に意識しておきたい、という青木氏の発言は、ちょっとした目から鱗でした。
部落解放からの反差別×小林健治
権利を利権呼ばわりして弱者を罵倒し差別意識を固定化させるヘイトの問題点を語り合
う二人。ヘイト差別禁止法制定前の対談だったので同法を制定せよという意見で一致している。
ジェノサイドの残響×加藤直樹
嫌韓、嫌中の根底には、日本はアジアで一番でいなければいけない、逆に言えば失地回復するためには韓国、中国は下にいてもらわなきゃ困るという民族的憎悪がある、と指摘する二人。
水俣病患者支援×永野三智
チッソと水俣病は過去の出来事という受け止め方をしている人が何と多いことか。繁栄
のためには一部に被害があるのも仕方ないという水俣を訪れた高校生のアンケートの結果には愕然とさせられる。今もチッソと水俣は複雑でかつ現在進行形だ。現在もチッソは世界シェア約 4 割を占める大企業で、水俣は企業城下町であることに変わりはない。過去の問題ではなく現在進行形の問題であり、かつ当事者意識を持つべきなのに(チッソは当時日本のプラスチック可塑剤の 8 割を生産。日本人全員が恩恵を受けていたのだから)それが持てないことが事の本質だ、だから声をあげ続けてなくては社会や国の施策は変わらないと語る永野氏の言葉は重い。
いじめとレイシズム×渡辺雅之
ヘイトスピーチは①変えられない出自や属性に向けられている②マイノリティーに向け
られる③攻撃された側は容易には反撃できない。これはいじめの構造と非常に似ている。
世界の人権状況×土井香苗
ヒューマンライツウォッチ東京オフィス日本代表。海外に比べて里親を支援する制度が
日本にないのは子供の人権状況から問題があると指摘する。また「人権侵害は内政不干渉の例外である」との認識が広がって人種差別撤廃条約、子どものための条約ができ、女性のための条約ができ、と展開してきている。