2005年11月18日第1刷発行
裏表紙「四季おりおりの江戸の風物を背景に、事件のサスペンスが、こころよい人情と溶けあう独自の境地。ご存じ鬼平シリーズ第二巻は、鬼平こと長谷川平蔵の並外れた勘が冴える『蛇の眼』他、『谷中・いろは茶屋』『女掏摸お富』『妖盗葵小僧』『密偵』『お雪の乳房』『埋蔵金千両』の全七篇。」
堅気に戻った弥市の店にかつての盗賊仲間の庄五郎がやってきた。弥市が拷問を受けて仲間を売ったことに恨みを抱く源七が上方から江戸に戻ってくることを教えてくれた。以来、店に出られなくなった弥市だが、与力・佐嶋忠介に源七のことを伝えた。庄五郎は再び弥市の前に姿を現わし次のお務めの手伝いを求めた。協力してくれたら源七の居場所を教えるという交換条件を出して。弥市は承知したが、これは庄五郎と源七がタッグを組んだ罠だった。弥市の行動がおかしくなったのを妻のおふくが気づき、店を出ていく弥市の後を笠をかぶって付けていく。その姿を見た佐嶋と平蔵が尋常でない状況に驚き、二人の跡を付けていく。錠前作りをし終えた弥市が庄五郎にそれを渡すと、その場に源七が現れる。舟で移動した庄五郎らを付けた平蔵は一味を全員お縄にした。舟の中には弥市の死体があった。
お雪の乳房
60歳になる鈴鹿の又兵衛は平蔵の活躍で引退を考える。亡妻およしの弟善四郎は又兵衛から姪のお雪を預かっていた。最後の退職金代わりのお務めで引退する決意を固めた又兵衛だったが、善四郎からお雪に悪い虫がついた、相手は火付盗賊改めの同心で木村忠吾だと聞かされ川獺の又兵衛もこれには仰天した。平蔵にお雪のことを話した忠吾はお雪を迎えに行くと、善四郎は別の親戚にあずかってもらっていると言う。粂八が昔の仲間の善吉を見たことを平蔵に告げると、平蔵は善四郎が善吉だと分かり、忠吾にもお雪のことは任せるように言う。善四郎は又兵衛のお盗めの間お雪に別の理由をこしらえて京に連れて行く。その姿を又兵衛や右腕の伝七の姿を確かめた粂八は平蔵にそのことを告げ、いよいよ急ぎのお盗めが迫っていることを知る。お盗め先を突き止めた平蔵は又兵衛一味をお縄にかける。忠吾は全てが終わった後に平蔵から真実を打ち明けられ、お雪のことはきっぱりと諦めた。
埋蔵金千両
小金井の万五郎は今わの際におけいに自らがかつて大泥棒だったことを明かす。おけいば大そう驚く。そしてこの２年間よく尽くしてくれたと礼を述べ、千両もの金の半分をおけいに条件付きでやると遺言する。条件とは信州・上田にいるを百姓女を装って連れてきてもらいたいというものだった。そこに中村宗仙という医師が薬を使わず指だけで自分なら治せるというので、万五郎は治ったら百両を払うという。３日程で効果が出て来たという話をたまたま聞き付けた平蔵が万五郎という浪人が50両もの大金をポンと差し出したことに違和感を持つ。万五郎は治ると分かるとおけいに金の在処を喋ったことを後悔した。かつて仲間は万五郎が死にそうだと聞けば、おけいを殺して独り占めしてしまうかもしれないとあれこれ心配し出した。ところが、おけいはおけいで、途中で独り占めする気になって万五郎の下に戻るつもりもなくなっていた。宗仙はいつの間にか万五郎が家を留守にしているため失踪届を出した。万五郎は馬子を殺して馬に乗って金を隠した場所に向かった。ところが隠し金は既に掘り出された後だった。ショックのため万五郎は心臓麻痺を起こして急死した。跡をつけていた平蔵だったが、万五郎の妾おけいの所在を突き止め、おけいから洗い浚い白状させ、万五郎のかつての仲間に踏み込むと、この者も既に病死していた。
