蜜蜂と遠雷 恩田陸

2016年9月20日第1刷発行 2017年4月30日第13刷発行

 

風間塵、栄伝亜夜、マサル・カルロス・レヴィ・アナトール、高島明石の4人のピアニストが競い合う。中でも風間塵が注目の主人公。パリのオーディションに登場した風間塵は無名の新人。但し伝説の音楽家ホフマンに5歳から師事という経歴は誰しもの目をくぎ付けに。ホフマンは生前爆弾をセットしておいたと言い遺したが、爆弾とは風間のことだった。天からの贈り物とするか、厄災とするかは我々にかかっているとのホフマンの謎かけのような言葉が冒頭に出てくる。彼の父親は養蜂家。栄伝亜夜は天才ピアニストとして幼い頃から注目されていたが、13歳の時に母が急死してピアノから離れる。再び音楽の世界に舞い戻った彼女はコンクールに出場する。マサルは、日本、フランス、アメリカで暮らし、ナサニエル・シルヴァーバーグの秘蔵っ子。天才の呼び声が高い。28歳の明石は芳ヶ江国際ピアノコンクールに出場する最高齢者。明石の高校の同級生・仁科雅美がドキュメンタリーを撮ろうとしていた。コンクールの第一次予選では、スターのごとく登場したマサルの演奏が圧巻。風間の評価は真っ二つ。絶賛と怒号が飛び交った。そして亜夜が登場。塵の演奏を聞いたことでブランクが一気に解消されたようにのびのびと演奏した。マサルが日本にいた頃、彼女は同じ先生にピアノを習っていた。演奏が終わり、審査委員長が一次予選通過者の名前を読み上げ、その中に、塵、マサル、亜夜、明石の名前は当然ある。二次予選は演奏者に40分の演奏時間と3つの課題が与えられた。中でも宮沢賢治の詩をモチーフにした『春と修羅』の演奏をどうプログラムに組み込むかがカギ。初日に明石が登場。2日目にマサル。亜夜はマサルの演奏を聴いて練習したくなった。そこに塵が現れる。塵はホフマンから一緒に音を外に連れ出してくれる人を探しなさいと言われていた。塵の音を聞くうちに彼女の中に『春と修羅』が次第に浮かんできた。最終日は塵の残虐で激しい『春と修羅』の後、亜夜は対照的に母のような『春と修羅』を演奏した。天才少女の完全復活だった。結果は明石落選、マサル、塵、亜夜は三次予選へ進んだ。。本選には6人だけが進む。マサルは彼らしいダイナミックな演奏を披露する。塵の演奏はコンクールではなく即興ライブのようだった。亜夜は覚醒した状態でステージに向かい、更に一回り成長した演奏を披露する。ホフマンの言う『ギフト』の意味がようやく伝わる。塵の才能が起爆剤となり他の才能を開花させるという意味だった。マサル、塵、亜夜は本選へと駒を進める。明石は『奨励賞』『菱沼賞』に選出された。菱沼賞は『春と修羅』を演奏したコンテスタントの中で一番良い演奏をした者に贈られる賞だった。明石は音楽家として生きていける確信を得た。本選では、オーケストラの中で伴奏が求められた。初日にマサル、二日目に塵、ラストを亜夜が飾った。彼女は塵の演奏を聴き、ピアノを離れるきっかけになった曲を弾いた。眠っていた彼女の音楽は彼等の音楽によって掘り出された。コンクールは終わった。審査員の三枝子とナサニエルの二人はホフマンに献杯した。巻末を開くと、本選結果が記されていた。一位マサル、二位亜夜、三位塵だった。

最も印象に残った場面は、塵が楽譜を読む際に、作曲家が何を考えているのかを小説の如くストーリーや登場人物の心理を読み取り、それを音にするためにピアノを自由自在に演奏していく。音楽って小説と同じなんだ!ということを改めて気付かされた。ただタイトルの「蜜蜂と遠雷」って、ちょっと内容から少し浮いてない?って気がしました。