薔薇盗人1⃣ 浅田次郎

2003年8月30日第1刷発行

 

裏表紙「『親愛なるダディへ』-豪華客船船長の父と少年をつなぐ寄港地への手紙。父の大切な薔薇を守る少年が告げた出来事とは-『薔薇盗人』。リストラされたカメラマンと場末のストリッパーの深い哀情『あじさい心中』。人間の哀歓を巧みな筆致で描く6短編。」

 

あじさい心中

出版社をリストラされたカメラマンが、温泉地のストリップ劇場で43歳の踊り子リリィと出会い、リリィの半生を聞く。リリィの話を聞いているうちに、いつしか二人は心中しようとなるが、劇場の支配人が急死し、心中どころではなくなった。劇場でカメラマンがリリィを撮影し、その写真を見ながら、もう一度、カメラマンとしてやり直そうかなという気持ちを持ち直す。なかなか良く出来た短編でした。

 

死に賃

37歳の秘書は主人公の会社社長(70代)の有能な秘書だったが、仕事だけでなく、社長の家庭でも、社長の後妻が家を不在にする時など、食事の用意までしていた。主人公の長男は大学の教授で堅物、次男は会社取締役だが器が小さく女性問題が派手、娘は離婚していた。その次男の不倫相手が秘書だったと気付き、秘書も淋しかっただけで愛しているわけではないという。主人公の盟友が痛みを伴わずに死ねる会社に1億もの大金を払っていたが、その会社は詐欺会社だった。家族の誰よりも秘書が面倒を見てくれることに深く感謝していたところ、主人公は病に倒れ、そんな矢先に秘書から自分が好きだったのは社長だったと告白される。これは現実なのか夢なのか。