労働NPOの事件簿 仕事をめぐる「名もなき人たち」のたたかい 社会保険労務士 北出茂

2023年2月5日初版第1刷発行

 

帯封「まだ詰んでなんてない、何でも相談できる『労働NPO』があるじゃないか! 非正規労働が拡大し、働く人たちの権利が危機にさらされる現代ニッポン。労働問題のスペシャリストたちが集い、弱い立場の働く人をサポートする労働NPOでは、今日も『雇用の劣化』とのたたかいが繰り広げられている-待遇差別、不当解雇、給料未払い…多様な職種・雇用形態の事例をもとにした、『使える』労働問題ノベル」

 

第1章 派遣社員に対する差別的待遇

 正社員と派遣社員とで食堂が派遣社員には使えないという差別的待遇があったりパワハラがあったりという理由でNPOにあっせん手続きを勧められて手続きを取ったら1回目で和解が成立した。

 

第2章 非正規社員に対する雇止め

 非正規社員であってもコミュニティ・ユニオンであれば1人でも入れる労働組合なので、5か月の雇止めの解決のために加入して団体交渉を申し入れたところ、あと1か月雇用するという合意を取り付け、これにより失業給付を4か月間受けることができることになる。

 

第3章 引越し屋さん罰金事件

 遅刻したら罰金発生で日当が半分に減らされるなんてことは違法だから支払えと通知を出したら払ってもらえる。

 

第4章 有給休暇のない会社

アルバイトでも有給休暇は入社してから半年の時点で10日与えられる。理由を説明する必要はない。会社には時季変更権があるだけ。

 

第5章 不当解雇は撤回できるか

 建設工事の現場監督をしていた主人公が毎日睡眠4時間で休みも月1しか取れないので社長に応援要員を求めたら言い争いになって明日から来るなと解雇される。労働審判を申立てて会社は整理解雇だと言い出したが、整理解雇が認められるケースではないという書類をNPOが作成してくれて短期間で解決できた。

 

第6章 内定取消と法的根拠

 複数の身元保証人を提出できずに内定取消になった大卒の2人。母子家庭や海外留学生でそもそも身元保証人を探すことが困難だった。NPOから勧められて団体交渉のために組合に加入して団体交渉を実現し、そこで身元保証人の趣旨を会社側が正確に理解していないことから内定取消が撤回されて入社できることになった。

 

第7章 外国人労働者の悲哀

 経営不振から辞めることになったが、会社都合でなく自己都合という理由をでっち上げられて退職したため解雇予告手当や失業給付が2か月も遅れて支払われる羽目に。NPOを頼ってあっせん手続きを使ってみたら会社から4か月分の支払を受けられて早期解決できた。

 

第8章 ガールズバー事件

 弁当持ちだとミテコだの夜の世界に精通した行政書士の美波が「今回取り返すのは金だけやあらへん。傷つけられたプライドを取り戻してやりたいんや。労働者の権利、人間の誇りを取り戻す闘いなんや。俺も命がけで取り返すさかい、お前も命がけで遙香さんを守らんかい」というセリフはなかなかグッとくる。チンピラのような店長と店に突撃して団体交渉を始め、何とか別日程で団体交渉の約束を取り付け、1カ月後に支払うと約束させるのに成功させたものの、思いっきり約束を破られてしまう。労基署に出向いて相談員でなく監督官の面談にすぐさま辿り着き申告に及んで受理される。刑事告訴状と民事裁判訴状を用意して次の団体交渉に臨んでも埒が明かず法的手続きに移ることを宣言すると突然店側は2か月分の給料を支払うことになり和解成立。

 

小説風に8つの短編ストーリーを組み立てながら、労働問題の知識もしっかりと学べる本でした。