あきらめない 働く女性に贈る愛と勇気のメッセージ 村木厚子

2014年12月1日第1刷発行

 

裏表紙「『どんなことが起こっても必ずリカバリーできる。平凡な私でもできたのだから、あなたなら大丈夫』-霞ヶ関を上り詰めた『働く女性の希望の星』が、虚偽公文書作成の容疑で逮捕。164日間の勾留の後、無罪を獲得。彼女が決してくじけなかったのはなぜか。すべての働く女性にエールを贈る感動作を文庫化。勾留生活を支えた149冊の本リスト付き。」

 

目次

文庫版まえがき

はじめに

私の履歴書

第1章 「あきらめない心」の原点

人見知りだった私が労働省に入るまで

がむしゃらだった20代

結婚そして出産、子連れ赴任

第2章 仕事の軸が見えてきた

女性たちのネットワークに助けられて

家族の絆

仕事で生きた育児体験

昇進のススメ

つながって見えてきた自分の仕事

第3章 逮捕、勾留を支えたものは

逮捕そして勾留されて

心のつっかい棒は娘たち

折れない心の秘密

[家族の想い]
これからも一緒に歩いていこう 夫(団体理事・57歳)
母を心から尊敬しています  長女(会社員・26歳)
信じた通りの家族だった 次女(大学生・20歳)

第4章 釈放・復職、そして今後のこと

やっとすべてが終わり、復職へ

今、思うこと

おわりに

[巻末資料]勾留生活164日間を支えた149冊 全リスト

 

・地元の高知大学に進んだ著者はずっと働き続けられる職場という消去法の理由で国家公務員Ⅰ種試験を受験し、採用になった800人のうち女性は僅か22人の中の1人だった。しかも行政、法律、経済という事務系の分野では同期の女性は5人しかいなかった。

・学生時代の経済学の教授の「広く浅く、時々深く」の話は仕事を実際に初めてその通りだと実感。仕事の間口を広げておけば後でつながって大きな経験の塊となって必ず役に立つ。

・新しい概念を広めて被害に遭っている人を守るためには言語化は重要。セクハラは当時週刊誌ネタの一つに過ぎなかったが、セクハラ研究会を立ち上げ予算をつけたのは忘れられない。但しセクハラと言う言葉を使わないと言う条件が出たので「非伝統的分野への女性労働者の進出にともなうコミュニケーションギャップに関する研究会」に変更して予算を獲得した。厚労省発の造語で成功したのは「ハローワーク」「イクメン」。

・41歳で障害者の労働問題を担当するまでは長く女性問題に携わり、現場に足を運んだ。

・海外では女性が働くための整備がきちんとできている国の方がむしろ出生率が上がってきていることも分かってきたし、医療、年金、介護といった社会保障の機能を維持していくには今の労働力である女性、将来の労働力である子どもを大切にする、女性が働きやすく子供を持ちたい人が子どもを持てる政策が非常に重要となったきたので、厚生省と労働省が統合され、雇用均等・児童家庭局の誕生は大きな意味を持った。52歳でその局長となり、育休法改正法案が間もなく成立と言うタイミングで逮捕された。

・「凛の会」が障害者団体であることを示す企画課長名の証明書を発行した企画課係長と共にその発行を指示したとして逮捕された著者だったが、この郵便不正事件で係長から押収したフロッピーディスクのデータを改ざんした主任検察官が最高検に逮捕され、著者の地裁無罪判決に対する控訴は断念されて無罪確定。

・証明書作成時のフロッピーディスクのプロパティを添付した1通の捜査報告書が著者の目に留まり、これが無罪判決に向けて大きく動き出すきっかけとなる。検事のストーリーでは証明書の偽造指示は6月上旬なのにプロパティでは最新の更新日時は「2004年6月1日1時20分06秒」。矛盾していることは一見して明らかだ。これを本人が見つけたというのは大きかったのだろう。その意味で、「今、できること」だけを考えて、それをやる。さすれば不思議と気持ちが落ち着くというのはさりげない記述だが、含蓄が深い。

 

何が起きてもあわてず冷静に対処することで見えてくるものがある。慌てると見えるものも見えてこない。こんな究極の事態に直面しても冷静に対処できるかどうかは普段からの仕事への取組みの姿勢がきっと物を言ったんだろうと思う。この姿勢は見習わなければならないし、見るべきものを見ることができれば、窮地に陥ったとしても道が開けることを教えてくれる。勝つことより負けないことが大事だとよく言われるが、確かに検事を相手に勝つのは難しいだろうが、嘘の調書にサインしないと言う意味で負けないことの大事さというのはこういうことを言うのかと大変勉強になった。