2006年11月初版第1刷発行
テレビドラマ「チャングムの誓い」の原作かと思いきや、どうやら本書はそうではない。ドラマでは、チャングムは宮廷女官だった母の遺志を継ぎ、幼い頃に宮廷に入り料理女官を目指し、母から習った料理の基本と才能を遺憾なく発揮して、チェ尚宮やクミョンの嫌がらせにもめげず料理女官として宮廷内で地位を固めていくが、母の親友でありチャングムの師匠でもあるハン尚宮と共に、チェ尚宮らの陰謀によって宮廷を追われるが、再び女医として宮廷に戻り、遂には女性で初の王の主治医に登り詰めるというサクセスストーリーだったように思うが、本書では母の遺志を継いで料理女官を目指すというドラマの前半の柱は存在しない。貧民出身で女の身でありながらオンニョニは、明心宝鑑や四書五経を学ぶ美しくて聡明な韓ネオンから目をつけられてめかけにさせられそうになるのを回避しようとして宮廷入りするところから、しかも金絲未断の判定を受けて処女であることが証明されたことをもって宮廷入りするところから始まる。厨房のカクシから働き始める予定だったが、経書にも明るく筆の運びもこの上ない聡明な女性だったために繍房のカクシとして働き始めることも可能だったが、オンニョニは自分をここまで導いてくれた厨房の宮女や韓ジョンヒの親切を考えると、厨房に行くのが人の道だと決断した。韓ジョンヒはオンニョニを師匠
姮娥ハンアに命じ、朴スンギからチャングムと名付けられた。チャングムへの鞭打ちの場面は、韓ジョンヒがチャングムに「生はんかな聡明さは誠実さに劣る」と厳しく叱責しながら、“何事も誠心誠意で尽くすことが人の道”と教わったはずの基本を、ちやほやされて有頂天になってすっかり忘れてしまったことへの自らの罰としてチャングム自身が求め、韓ジョンヒも心で泣きながら心を鬼にして鞭打ちを実施したものとして描かれている。