鹿鳴館の系譜《下》 近代日本文芸史誌 磯田光一

1997年10月20日発行

 

「革命」という外来思想―風土の中のドラマ

「革命」とは古代中国では、天の命令によって天子の代ることを意味したが、辛酉革命と言われるように年号改元の意味を含むようになり、江戸時代には社会変革をも意味するようになった。封建制→資本主義→革命という帝政ロシアを倒す有効な思想は、西欧の没落後に革命によって世界の先進国になれることを予言した思想だった。歳月が流れ、マルクス主義も1つの思想に過ぎないという認識が一般化したことの代償として昭和の思想史は「革命」という言葉が“道徳”“人格”の根源に接することができた時代を失った。それが幸か不幸か別にして、プロレタリアート作品は一時代をとらえた思想のドラマの産物として精神の高さを備えつつ何かを訴え続けている。

 

他に、「『田園の憂鬱』の周辺―佐藤春夫宇野浩二」「日比谷・銀座界隈―都市と前衛芸術」「昭和のモダニズムーある感情革命」「三人の鹿鳴館演出者―聖徳太子伊藤博文吉田茂」が収録されている。