2023年5月20日発行
織田家鉄炮頭の橋本一把は、鉄炮の力で天下を平定すれば、それが万人のためになる。天下泰平のため、攻め寄せてくる敵には死んでもらう。ただ闇雲に殺戮するのではない。尊厳をもって殺し奉る。それが人を殺める礼節だと心得ている。ひとり撃ち倒すごとに「南無マリア観音」と祈った。一把から鉄炮の威力を見せつけられた吉法師(織田信長)はすぐにこれを取り入れた。日本では玉薬を作る塩硝を産出できず、明もしくは南蛮からの輸入に頼っていたが、本能寺の門徒衆が種子島で塩硝を作り出していると聞き、一把は塩硝を確保するのに成功する。大怪我をした一把に無益ならば去れと言う信長だったが、一把はそんな信長に天下取りの秘策を授けた。商人たちに自由に商いをさせ、鉄炮鍛冶どもを統べて目を光らせ、本能寺を使って塩硝を手に入れる、そしてこれをおのが私欲のためになすのでなく、天下万民を安んじるためになすようと献策した。信長の上洛の翌年、今川義元が東海道を上って田楽狭間のせまい谷に休息中、信長は急襲し、僅かな兵力で義元の首をはね落とした。