ローレンスの原作は1928年に発表され、無修正版が出版されるとイギリスでも猥褻文書として告訴されるが無罪になる。しかし日本では猥褻文書として最高裁で有罪が確定した。
美しい令嬢のコニー(エマ・コリン)は、貴族のクリフォードと結婚するが、夫は、戦争で下半身不随となり、車椅子の生活になった。当初は献身的に夫に尽くしたが、夫婦生活がなく次第に疑問を抱くようになる。コニーは門番のオリヴァー・メラーズと出会い、夫の世話はボルドー夫人がするようになる。処女同然のコニーは偶然森の中でメラーズが半裸で体を洗っているのを見て衝撃を受け、その晩、自らを慰めた(原作は“コニーは眼からはいったショックを子宮の中で受けとめた。自分でもそれがわかった。それは彼女の内部にとどまった”と描いた)。いつしかコニーはメラーズのいる小屋に出掛けるようになり、遂に体を重ねてしまう。メラーズはコニーに2度と来てはいけないと言うが、コニーはメラーズを求め、メラーズはコニーの股間に顔を埋めた。コニーはメラーズからすぐに離れたが、次に出会うと、理性が弾け飛び、森の中でSEXを始めた(原作は“彼が動き始めたとき、突然抑制できない快感が起こり、彼女の内部に、新しいふしぎな戦慄が波立つように目覚めてきた”“この上もなく、楽しく、楽しく、彼女の内部をことごとく融かしていった。それはどこまでもどこまでも高まり、最後に頂点に達する鐘の音に似ていた。彼女は最後に自分が発した荒々しい小さな叫び声に自分で気づかずに横たわっていた。彼女はもはや自分で身体を動かして自分の結末をむかえることはできなかった(略)彼が彼女の中から滑り出て、離れてしまうという怖ろしい瞬間が来るのを感じて、待ちながら呻いていることができるだけであった。その間じゅう彼女の子宮は開いて柔らかくなり、潮に揺られるイソギンチャクのように、柔らかく訴え求めていた。もう一度入って来て彼女の中を満たしてくれと訴え求めていた”“彼もまた完全に彼女の外へ滑り出はしなかった”“言語をこえた運動が始まった。それは本当は運動と言うものでなく、純粋な、深まって行く感覚の渦巻であった。それは彼女の総ての細胞と意識の中に深く、更に深く渦巻いて入って息、終いに彼女は、一つの完全な求心的な感覚の流れになった。そして彼女は無意識に、意味のわからない譫言を叫びながら横たわっていた”と描いた)。別れ際、メラーズは貴族を死人と呼び、だから炭坑や戦争に人を行かせることが出来ると語り、コニーは特別な人だと言う。野原で2人は全裸で小さい花を摘みメラーズはコニーの陰毛に花を飾った。コニーは夫と相談してベニスに行き、人からは夫の子を持つと説明することにした。クリフォードのエンジンつきの車いすが丘の急斜面で動けなくなった時、メラーズも助けに現れたことでようやく重い車が動き出したが、この時、夫がメラーズを侮辱したため、コニーは夫に愛想を尽かす。2人は小屋の前で大雨の中を全裸ではしゃぎ回る。ベニスに出掛けたフリをしてコニーは姉のヒルダとメラーズの元に出向く。が姉はメラーズに身を引けと言う。夫は子を渡さず離婚もしないとメラーズは言い、コニーは一夜の情事を楽しむ。翌朝姉にコニーは妊娠していることを告げた。2人の仲は周囲では噂になっていた。ボルドー夫人はメラーズの妻をロンドンから呼び寄せ、メラーズは失職してコニーの夫から敷地から出て行くよう通告された。コニーはメラーズに会いに行くが、メラーズは時が来たら迎えに行くと言って2人は別れた。コニーは夫に、メラーズの子を生むと言い、離婚したいと言い出した。夫は離婚は絶対に認めないと反対する。コニーは姉とベニスに出掛けた。スコットランドにいたメラーズはコニーに手紙を書き、コニーはメラーズを追い掛け、スコットランドの彼の家で再会した。
今回参照した原作は「完訳チャタレイ夫人の恋人 ロレンス 伊藤整訳 伊藤礼補補訳」平成8年11月30日発行 平成9年3月5日7刷
裏表紙「コンスタンスは炭坑を所有する貴族クリフォード卿と結婚した。しかし夫が戦争で下半身不随となり、夫婦間に性の関係がなくなったため、次第に恐ろしい空虚感にさいなまれるようになる。そしてついに、散歩の途中で出会った森番メラーズと偶然に結ばれてしまう。それは肉体から始まった関係だったが、それゆえ真実の愛となった―。現代の愛への強い不信と魂の真の解放を描いた問題作。」
今となってみれば、猥褻で有罪にされるような表現でなく、充分立派な文学作品だと思う。猥褻で問題になった背景には、未だ身分制が色濃く残るイギリス社会の中でタブーを犯したという側面が多分に影響していたのではなかろうか。