サドンデス 相場英雄

2023年9月15日第1刷発行

 

帯封「『成り上がるか。死ぬか』立て続けに起きた無差別殺人。裏で富裕層が教唆するゲームだとしたら? 格差と貧困、SNSでの誹謗中傷、スマホ依存…。『震える牛』『血の轍』『ガラパゴス』の著者が現代の歪みを露わにする社会派警察ミステリー」「21歳の理子は金銭面で厳しい生活を送ってきたが、ある女性と出会い、人生が好転する。彼女に誘われてラウンジで働き、高い評価を受け、新規の店を任されることになったのだ。充実した暮らしぶりをSNSにアップロードする一方で、その飛躍を妬む者も増えていく。百貨店で閑職に追いやられ、しまいには墓穴を掘ってクビになった小島もその一人だ。そんななか、世間では無差別殺人事件が立て続けに起きる。模倣犯なのか。警視庁サイバー犯罪対策課の長峰は一連の事件の奇妙な共通点に気づく。折しも、小島の理子への嫉妬心は殺意に変わっていく-。虚弱体質。群れたくない。ITオタク。刑事らしくない男が社会の暗部を暴く。」

 

父と母が離婚した。原因は父のDVとモラハラで他外に女もいた。母を選んだ高梨理子は2人で大学生活を始めたが、父は職場を首になり養育費が途絶え、母はうつ病になり、貧困に苦しむ理子は高田馬場ガールズバーでアルバイトを始めた。週5,6日で月30万程稼ぐ計算だった。ある日、客のミカコからもっと条件のいい場所で働かないかと声をかけられ、恵比寿の会員制ラウンジだと月50万になるという。そこで知り合った男からゲームへの参加を誘われ、更に別の会社社長に指名され契約金1000万円を提示され、それを元手にゲーム参加を求められた。その頃、東京駅で無差別殺傷事件が起きた。理子は参加を決断して京都の祇園でママとなってラウンジを任された。次の無差別殺人事件が渋谷ハチ公前広場で起きた。いずれの容疑者も無名で貧乏な中年男性だが、この2人を有名な実業家2人がフォローしていることにサイバー犯罪対策課の長峰が気付く。有名な実業家はいずれも理子にゲームを勧めた唐木と高畑というネットを使いこなして急成長した若き実業家だった。一方、百貨店でバイヤーだった小島克義は仕事のストレスで胃炎を患い、閑職に回されると部下にパワハラを行い懲戒解雇を言い渡され、その直後、運悪く母が骨折して認知症を発症し、小島は金に困り果てていた。鬱屈した思いを小島はSNSで憂さ晴らししていた。そんな小島に唐木と高畑がフローしているのを発見した長峰は理由を考え始めた。長峰は小島を尾行し始め、唐木と高畑を調べ始めると、そこに理子の存在が浮上した。長峰は唐木に無差別殺人事件の容疑者をフォローしている理由を聞き、理子にも話を聞くために動き出す。その頃、表参道で三度無差別殺人事件が起きる。永島栄五容疑者も唐木と高畑がフォローしていた。そして永島は理子の父親で、ネット上で早くも祇園の美人ママは殺人鬼の娘!というスレッドが立ち上がる。長峰は、過去3件の被害者と共有点を持つ理子が、今度は小島から命を狙われている、仕組んだのは唐木と高畑だと思われると教える。理子は用心したはずだったが、味方だと思っていた2人の男性が最後に裏切り、小島が理子と一緒にいたもう一人の犠牲者を血祭にあげた後、ミカコが理子救出に現れる。小島は世を呪い、死刑になるために理香と男の2人を殺害するために乗り込んできたが、理香殺害は失敗した。警察がようやく救出に現れて小島が殺人で逮捕される。唐木と高畑は殺人を全世界に中継して金儲けをしていた。最後に理香を裏切った2人はその殺人現場を撮影するために多額の金を掛け金につぎ込んでいた。ミカコは唐木と高畑をスパイするために送り込まれたゲームチェンジャーだと名乗り、海外の会社は唐木と高畑の会社を最低のコストで買収した。理子はネットのない田舎の生活を始めようとしていた。