大審院第三民事部の裁判長の吉田久は、昭和20年3月、翼賛選挙を無効だとする判決を、命がけで言い渡し、その4日後、職を去っていた。当時の時代状況(戦争の真っ只中)を考えるとき、勇気ある、また裁判官の独立を勝ち取った、余りにも著名な判決であるはずなのに、浅学にも、この本を読むまで全く知らなかった。
吉田裁判官は、相当の努力家であったようだ。ドイツ語、フランス語を勉強し、フランス法の本を出版したとのこと。地裁所長や控訴院長は「床の間の置き物」だと公言し、現場一徹を貫いた裁判官らしい。三宅正太郎という刑事裁判官も登場し、「裁判の書」という著作を発表したと紹介されていたが、この人の著作も読んでみたい。