うつくしい人 東山魁夷 村上通哉

東山魁夷と特別な親交を結んだ中学教師がいた。1980年、文化祭の企画が縁のはじまり。翌年、著者は生徒たちと展覧会に正体され、子どもたちを大人と対等に客人として遇する画伯の態度に感動する。子どもたちへのまなざしが共感を生んだのか、東山夫妻との交流は続いた。「あの方にして、あの絵あり」。著者が目の当たりにした、巨匠の知られざる素顔。魁夷作品の観賞に奥行きを与えてくれる感動の書(裏表紙)。

帯封 画家としてすごい前に、人間としてすごいんだ。だから、絵の前に立つ人すべての心を洗い清めるような、吸い込んでしまうような、あんな絵が描けるのだ、と思った

文化祭で生原稿展を企画し、それに東山画伯ら大家が次々と原稿を寄せたところから出発する本書だが、生徒の心・感性に率直に訴えかけ、感動のるつぼと化していくクラス一人一人が、大人になっても綺麗な心を持ち続けていくという、東山魁夷画伯とその夫人に焦点を当てつつも、著者が教師いかにあるべきやを問題提起した良書の一冊だと思う。

「花明り」の実物や鑑真和尚が安置されている唐招提寺御影堂の障壁画の数々を、特別に、食い入るように立ち尽くしてみることができた生徒の心に触れた時、本当に感動できる物に出会った時に人は年齢に関係なく感動するという当たり前といえば当たり前だが、それでも日常生活の中に埋没しているとすぐに忘れてしまう大事なことを思い出させてくれました。

信濃美術館、筑豊絵本館には、いつか行ってみたいです。