数学ミステリー X教授を殺したのはだれだ! 容疑者はみんな数学者!? 原作:トドリス・アンドリオプロス 漫画:タナシス・グキオカス 訳;竹内薫・竹内さなみ

 

2015年11月20日第1刷発行

 

殺人事件は勿論フィクションだが、それ以外の登場人物は実在の数学者。数学者としてどのような功績を残したかを巻末資料で簡単に触れられつつ、殺人犯を特定するために容疑者とされた登場する全数学者が簡単な数学の問題を出してその解如何で有罪か無罪かを読者に分かるようにするという一風変わったミステリー。でも実在の数学者を多数登場させているところが面白い。しかも犯人は意外にも?

 

以下の数学者が次々に登場する

1 ダフィット・ヒルベルト 1900年パリで開催された第2回国際数学者会議で講演

  「数学において解けない問題などないのだ」と。墓石には「わたしたちは知らねばならない。わたしたちは知ることになるだろう」との言葉が刻まされている。現代数学の父と呼ばれるフォン・ノイマンの師。

2 ルネ・デカルト(1596-1650)近代哲学の祖であり数学者でもあった

3 コンスタンティンカラテオドリ

  ヒルベルトと同時期にゲッティンゲン大学の教授をしており、とても親しい友人だった。物理学のエントロピー増大則と同じ内容をもつ「カラテオドリの原理」で有名。

4 ピエール・フェルマー(1601-1665) 弁護士でアマチュアの数学者。

  3 以上の自然数 n について、x + y = z となる自然数の組 (x, y, z) は存在しない、という定理で有名なフェルマーの最終定理。350年後の1994年、プリンストン大学ワイルズによってついに問題にけりがつく。

5 アイザック・ニュートン(1642-1727)とゴットフリート・ライプニッツ(1646-1716)

  同時期に微積分学を発見した2人。ニュートンライプニッツより10年前に理論を思いついたが八兆していなかったと主張。

6 ブレーズ・パスカル(1623-1662)

  哲学史の中で“パスカルの賭け”として知られているが、数学者でもある。「人間は考える葦である」

7 レオンハルト・オイラー(1707-1783)とケーニヒスベルグの橋

  7つの橋の問題に解答を与え、解決法がないことを証明した。

8 ベルンハルト・リーマン(1826-1866)と カール・フリードリッヒ・ガウス(1777-1855)

  フェルマーの最終定理が証明された後、リーマン予想は数学問題のリストのトップに躍り出た。リーマン論文を審査したのがガウス

9 ペイディアス(紀元前5世紀)

  パルテノン神殿の総監督 1.618=「φ」(ファイ)正面を形作る長方形は黄金比ダ・ヴィンチ黄金比率で絵画を制作し、ストラディバリウスのバイオリンもエピダウロスの古代劇場も黄金比で作られている。

10 マリー=ソフィー・ジェルマン(1776-1831)

  女性の数学者。社会的偏見が依然として存在する社会の中で、当初は女性であることを隠して研究する。ルブランという名前を使っていたが、ガウスに女性であることを明かす。

11 エヴァリスト・ガロア(1811-1832)20歳で亡くなる若き天才。ガロア理論って?

12 クルト・ゲーデル(1906-1978)と不完全性定理(1931)

  科学は完璧ではないことを証明。真偽を決定することが出来ない命題や予想がある。この真実を知ったことがリルベルトを死に追いやった。

  犯人はなんと「真実」だった・・

 

 この本の内容を言葉で説明することは難しく、とてもできませんが、でも、久しぶりに数学の楽しさを思い出させてくれるという幸せなひと時を過ごさせてくれる、美味しいスイートを食べさせてもらったような気分にさせてくれる一書でした。