説得の論理 3つの技法 草野耕一

2003年1月6日第1刷発行

 

現在最高裁判事の1人。西村あさひ法律事務所の代表パートナー。1955年生まれ。そもそもどんな人なんだろうと思い、思わず手にしてみたところ、部分的には納得するところもあり、納得できないところもあり、という本でした。

誰も説得の技法を日本では教えてくれていない、だったら自分が考えよう、でもそもそもどうして教えてくれないのか、その根本的原因に遡って考えてみたいという著者の立脚点が序章で語られる。読者の関心を引き付ける、問題提起型の序章。

第1章「何のために説得するのか」では、①言葉の大切さ、②説得の目的、③支点の置き所に絞って議論を展開する。第2章「3つの説得技法」から筆者ならではの独特の説明が始まる。功利的説得、規律的説得、情緒的説得。耳慣れない言葉が続く。第3章「功利的説得の展開方法」、第4章「規律的説得の展開方法」と続く。第5章「功利主義と人権思想」では人権思想は補完的機能を営むという、これまで考えたことのない切り口が展開されていた。第6章「事実の証明」、終章「失語社会を生み出したもの」では頽廃したレトリックではなく価値あるレトリックの復権を望んでいるように思われる。あとがき・文庫版あとがきには著者の言いたかったことが端的が示されている。ハーバード・ロースクールを出てニューヨーク州弁護士登録もしている。時間が出来た時にラテン語の勉強をしたともあったので、頭が本当に良い人なんだなと思った。