LOVE&SDGs 車いすでもあきらめない世界をつくる 織田友理子

2022年1月26日初版第1刷発行

 

遠位型ミオパチー(空砲型)と多発性硬化症を患う重度障がい者の3冊目の著作。

遠位型ミオパチーという病名すら私は知らなかった。晴れて大学生になった著者に襲い掛かった難病は、心臓から遠い身体の先から筋力を奪っていく治療法がない病気だ。著者自身もこの病気にめげないで頑張って生きている姿も素敵だし、著者の家族も応援している。何より発病した著者の病気のことを知りながら旦那さんが著者にプロポーズし、旦那さんの家族もそんな著者との結婚を喜ぶ姿も大変素敵だ。若いうちでないと出産できないと医師から言われて子を授かる。自力で動かす車イス生活が始まり、そのうち移動距離を伸ばすために電動車イスに切り替え、子が生まれた後もすぐに動けなくても一生懸命愛情をかけて二人で育児に取り組む姿も素敵だ。そんな著者は同じ難病をかかえる患者の会「PADM」(遠位型ミオパチー患者会)の活動に取り組み、当初は難病指定すらされていなかったのが指定されたり、治療薬がまだない中で有効な治療物質が見つかったことを受けて多額の助成金が出るように国に働きかけたりと、健常者より積極的に社会活動にも貢献している。

車いすで海水浴が楽しめる体験をしたのをきっかけにYOU Tubeチャンネル車椅子ウォーカーを開設し、高尾山の山登り、ハウステンボスや鹿児島、沖縄訪問の模様、韓国、台湾、マレーシア、スペイン、ポルトガル、スイス、オーストリア、ドイツ、アメリカ、カナダなどの海外訪問など沢山配信している。海外訪問の皮切りになったのが2015年7月の、オバマ大統領も参加したケニア国際会議の参加だという。ここでSDGsの構想が紹介され、2か月の国連持続可能な開発サミットでSDGsが採択される。これをきっかけにこれからの舞台は世界だという原点を掴んだという。

自分が発信するのには量的限界があると感じた著者はスマホバリアフリー情報を共有する「みんなでつくるバリアフリーマップ」の構想を実現しようと考えていたところ、グーグルのインパクトチャレンジ(非営利団体助成金を出す制度)の存在を知り、グランプリを受賞し、新しいアプリWheeLog!を開発しリリースする。24時間テレビでも世界一あたたかい地図として紹介される。

以前足首の骨を折って車いす生活をした事を思い出した。2,3週間そんな経験をしただけだったが、それでもバリアフリーがまだほとんどなかった時代だったので、本当に足の不自由な方の苦労が良くわかった。

「自分の可能性を狭めるのも広げるのも自分次第」「自分自身の可能性をどこまでも信じ、この先どんなに病気が進行してもあきらめないで生きている姿を社会に発信していくことが、私にできるSDGsへの最大の貢献」と語る著者。前向きな著者の心に接しているだけで、こちらの心もポカポカしてくる、そんな一冊の良書でした。